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直近では高周波無線通信を利用した大容量シームレス伝送をすることが将来像として描ける。また、家庭内やビル内、さらには列車、車、ロボットなど無線の先にある小エリア内での情報通信ネットワークの光化としてPhotonic Local area network (Photonic LAN)も考えられる。このため、アクセスネットワークの中での光電子融合プラットフォームの技術として、光から無線さらに光へと、情報媒体に依存しないシームレスな情報通信基盤技術の開発が重要となる。光情報通信技術はアクセスネットワークの高度化とコミュニケーション多様化、さらに、前述のような大容量な無線信号の収容など重要なインフラ技術である。光情報通信ネットワークの更なる大容量化とフレキシビリティ向上を目的とし、世界各国でデータ伝送速度の高速化や波長・偏波・空間多重、新規変調フォーマット利用など様々なアプローチでその技術開発の高度化が盛んに推進されている。このような背景の中、NICTでは光周波数帯域を有限の資源としてとらえ、光周波数資源の開拓に着目し、新しい光周波数帯域を光データ伝送に利活用するための基盤技術の研究・開発を進めている。図3に光通信で利用される波長帯域(光周波数帯域)の割当状況について示す。従来、光情報通信ネットワークではITU-T勧告に基づくC-band(1.53-1.57µm)とL-band(1.57-1.63µm)が積極的に利用されている。この主な理由として①波長1.55 µm近傍でシリカ系光ファイバのロスが最も低いこと、②エルビウム添加ファイバ光増幅器(Er-doped fiber optical amplifier: EDFA)による光信号の増幅及びデータの中継が可能であること、③半導体を中心とする光ICT(Information and Communications Tech-nology)デバイスが充実していること、などが考えられる。一方で、もしPtoPの光伝送システムを構成するためのこれら伝送路や増幅器、デバイス群に関する基盤技術が、他の波長帯域でも同様に成立することができれば、その波長帯域は新たな光情報通信のための帯域として有効に利活用できる。この考察の下、近赤外の波長帯域を俯瞰すると、新たな帯域として波長1.0~1.3 µm帯域(1.00-1.26μm; Thousand-band: T-band及び1.26-1.32μm; Original-band: O-band)が注目される。現在、最もよく使われているC-bandは約4.4 THz帯域であるが、これは50 GHzチャネルグリッド時に88チャネル相当である。対してT+O bandの光周波数帯域では1,000を超えるチャネル数を確保できることから、将来の大幅な光チャンネル数の確保が期待される。このT+O bandの波長帯域では、シリカ系またはプラスチック系光ファイバが充実しており、さらにこの波長帯域をカバーするイットリビウム添加ファイバ光増幅器(Yb-doped fiber optical amplifier: YDFA)やプラジオセム添加ファイバ光増幅器(Pr-doped fiber optical amplifier: PDFA)などの高効率光ファイバ増幅器も存在する。また、このT+O bandで動作する超広帯域光通信用デバイスとして半導体光デバイスのほか、近年では半導体量子ドット技術を用いた超広帯域レーザ光源や半導体光増幅器(Semiconductor optical amplifier: SOA)が実現されつつある。C-bandに比較してT+O bandは光ファイバ伝送ロスがわずかに高いことは知られているが、数mから20 km程度のアクセスネットワークではその伝送損失以上に、T+O bandを利用した、光周波数帯域に制限されないフレキシブルな情報通信ネットワーク構築等のメリットがあると期待される。以上のように、アクセスネットワークによる光・電子融合プラットフォームでは、光通信と無線通信をシームレスに接続し、可能な限り早く信号を光網に収容する技術や、無線の高周波化による大容量通信技術の実現、さらに新たな周波数帯域(波長帯域)を積極図3 光ファイバ通信で利用される光周波数帯域BandWavelength (nm)Frequency (THz)T-band1000126058.9 O-band1260136017.5 E-band1360146015.1 S-band146015309.4 C-band153015654.4 L-band156516257.1 U-band162516755.5 *T-band (Thousand band)Traffic jam波長(ミクロン)1.261.551.361.01.675バンド名L U C SE OT(波長1.0ミクロン帯)従来もっとも光情報通信に利用されている光周波数帯域光周波数(THz)238193220300179注目している光周波数帯域*非常に広い光周波数資源が将来の光情報通信に利用可能と期待394-1 光電子融合プラットフォーム
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