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的に活用した自由度の高い光ネットワーク技術の確立、これらがキー技術として考えられる。情報通信研究機構における光・電子融合プラットフォーム技術の開発 光・電子融合プラットフォーム技術を実現するためには、デバイスとシステムの両方を俯瞰した研究開発が重要である。NICTではこの視点に立ち、光電子融合デバイス技術を「パラレルフォトニクス技術」として、また光・無線の大容量シームレス接続技術を「100Gアクセス技術」と称して研究開発を推進している。図4は研究プロジェクトの全体像である。パラレルフォトニクス技術では高精度並列光送受信・スイッチング技術や、超小型、高速・高精度送受信デバイス技術を中心に研究開発を実施している。特に高速で並列に信号の送受信を行うときには、個々のデバイスの高速化・高精度化はもちろんのこと、パラレルに配列されたデバイス間のクロストークが問題となることから、多重化に伴うクロストークの抑制技術にも注目し研究を実施している。一方、100Gアクセス技術では、先述のとおり有線と無線を両用し、それらをシームレスで接続するためのモバイルバックホール・フロントホール技術の研究を実施し、100 GHz級のミリ波帯やテラヘルツ帯を利用した100 Gbps級の大容量光・無線シームレス接続を目指して研究開発を実施している。また、100Gアクセス技術の中では、光と無線を横断的に伝送される「波形」の重要性に注目した高速波形転送技術(Sensor on fiber技術)も実施している。これは、伝送に用いる送受信器、中継器、伝送線路等のデバイスやサブシステムに関して、そのリニアリティを極限まで高めることを中心にしたデバイス・システム研究である。この高速波形転送技術は、将来の高感度レーダや光と電波をシームレスに接続する際のスプリアス抑制、さらに低遅延伝送など、情報通信の高精度化等に重要な技術となる。この研究方向性に沿って創出された研究成果の一例を図5に示す。デバイス開発を目指したパラレルフォトニクス技術の研究開発では、図に示すような非常に小型・高密度な光電子集積デバイス技術として、DCから100 GHz以上の高い周波数の光・高周波変換を実現する半導体デバイス技術の開発に成功している。また、ナノテクノロジのひとつである半導体量子ドット技術と、複数の異種機能材料を組み合わせるヘテロジニアス光集積デバイス技術を確立することで、情報通信用の超広帯域・超小型波長可変レーザデバイス技術を確立している。一方、システム視点の100Gアクセス技術では、ミリ波・テラヘルツ波を用いた大容量光・無線シームレス通信技術として光ファイバ無線技術の開発や、空港滑走路の異物を高速に検知する空港滑走路監視レーダシステム、さらに高速鉄道用通信システムを実現するためのシステム基盤技術の確立に成功している。これらの技術の詳細については、本章以降に掲載される。以上、多様な利用シーンが想定されるアクセスネットワークにおける情報通信高度化の重要性とその将来に向けた取組の方向性について俯瞰した。電磁的な情報通信のためには光、無線ともに周波数資源の開拓が重要であり、無線の高周波化や、光通信の新規は超帯域開拓について示した。アクセスネットワークではデ3図4 NICTにおけるアクセスネットワーク基盤技術の研究開発多数の送信器多数の受信器マルチコアファイバパラレル信号入力パラレル信号出力微小空間内で光/電気の電磁干渉が顕著に微小空間の電磁資源有効利用(Gbps/ccの向上)を目指すセンサ情報等の効率的転送グローバル対応(ニーズの多様化、マーケットのグローバル化、社会実装、国際標準化)100Gアクセス技術伝送メディアフリー、波形転送による低遅延、低消費電力を目指す高画質画像等の伝送に対応したアクセスネットワーク多数のユーザ、高速移動するユーザへの接続パラレルフォトニクス技術高精度並列光送受信・スイッチング技術超小型、高速・高精度送受信デバイス技術有無線両用モバイルバックホール・フロントホール高速波形転送技術(Sensoron fiber技術)40 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)4 アクセスネットワークの大容量化を目指す研究開発
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