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はじめに光変調技術は電気信号から光信号を生成する基盤的技術であり、光変調器は現在の光ファイバ通信ネットワークを構成する一要素を担っている。年々増加し続ける通信トラフィックに対応するために光ファイバ通信における通信方式も高度に複雑化しており、デバイス性能への要求も高くなってきている。光変調器は光ファイバ通信の成長の歴史を共に歩んだデバイスであり、特に代表的な外部変調器であるLiNbO3(LN: ニオブ酸リチウム)変調器は1970~1990年代に精力的に研究開発が進められた[1][2]。現在実用されている変調器もこの時期に培われた技術が基となっている。LN変調器は広帯域化と低駆動電圧化を目指した研究が活発に行われてきたが、それを困難としていた要因のひとつはLNが難加工材料であるということである。例として、ドライエッチングによる光導波路形成は半導体に代表される他材料において基本的なプロセス技術であるが、LN基板を用いたデバイスではドライエッチングによる光導波路形成は容易ではなく、多くのLN変調器ではTi拡散やプロトン交換による導波路形成を採用している。その一方で、近年ではプロセス技術及び装置の発達により、LNのような難加工材料についても微細構造を作製できるようになってきている。例えば、イオンスライス法によるサブミクロン厚のLN薄膜基板が作製可能であり、エッチング加工によりリッジ導波路を形成することで小型かつ高帯域な光変調器が実現され始めている[3][4]。ただし、これまでに報告されているものは最小限の構成から成る単一マッハ・ツェンダ(MZ)変調器であり、実用されているDP-QPSK変調器のような集積デバイスへの発展が待たれる。光変調器の広帯域化及び低電圧化に関する研究開発が進められている一方で、変調デバイスの機能に関する研究の進展は少なく、LN変調器の黎明期に開発されたMZ干渉計型デバイスが現在も使われ続けている。変調器の構造は目的とする変調方式によるが、現在の変調器の基本構造であるMZ変調器は強度変調用途で開発されたものである。このMZ変調器は本質的には光波電界の振幅変調器であり、位相を変化させることなく振幅あるいは強度のみを変化させることが可能である[5]。長距離光ファイバ通信の実用化初期は強度変調・二乗検波方式で構成されており、LN強度変調器は不要な位相変化の小さい低チャープな変1光変調デバイスは光ファイバネットワークを構成する一要素であり、電気信号から光信号を生成する役割を担っている。一般的に、光変調器は高速に低駆動電圧で動作することが求められているが、近年では多値変調やアナログ応用を見据えて信号歪みの小さい光変調動作が求められ始めている。本稿では、極めて変調歪みの小さい変調器として、高消光比変調器と高線形性変調器の2種について試作デバイスの評価結果を交えて紹介する。Optical modulator is one of key elements constituting the optical fiber network, and the device plays a role of generating optical signals from electric signals. Many researches to reduce the half-wave voltage and to widen the electro-optic bandwidth of optical modulators have been reported. For the future applications such as analog radio over fiber, it is required to suppress the modula-tion distortions. In this paper, we review the two types of modulators for the precise optical modu-lation.4-2 高速光デバイス技術4-2High-speed Photonic Device Technologies4-2-1 高度な変調方式に対応した高速光変調デバイス4-2-1 High-speed Optical Modulators for Advanced Modulation Format山口祐也Yuya YAMAGUCHI474 アクセスネットワークの大容量化を目指す研究開発
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