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調が可能であることから採用された。その後、スペクトル利用効率や検出感度に優れるデジタルコヒーレント方式が提案され[6]、現在ではQAMに代表されるベクトル変調が主流となっている[7][8]。今後も更なる周波数利用効率の増大を図って変調方式の高度化が予想される一方で、デバイス構造の観点から見ると基本構造は強度変調用途に開発されたものが現在のコヒーレントリンクでも流用されている。今後は長距離基幹網以外のモバイルフロントホールやデータセンター向けリンクでもパフォーマンスを最大化させるために高度な変調方式が用いられることが予想されるが、デバイスについてもそれぞれのリンクに応じた機能及び性能が要求されると考えられる。本稿では、将来の超多値光変調やアナログ応用に向けた変調歪みの極めて小さい変調器について紹介する。数学的理論どおりに動作する高消光比MZ変調器と、そのMZ変調器が本質的に有する非線形性を補償した高線形性変調器について順に述べる。高消光比変調デバイス光ファイバ通信が普及している現在では、光変調器に限らず多くの基本的光部品が高精度に作製され、高性能なデバイスが安定して供給されているということが共通認識であると思うが、実際には光デバイスにおいて高い精度で設計どおりの性能を再現性良く実現することはいまだに困難である。例として、光の干渉を利用したMZ変調器では、理論上は無限のON-OFF消光比が得られるが、実際に作製された変調器では20~30dBの消光比となるのが一般的である。デジタル通信用途で使用する場合には、この有限の消光比による変調歪みを無視できる場合が多いが、多値QAM信号やアナログ信号生成等の用途では、この変調歪みが問題となり得る。上記のような問題を解決するため、図1に示す構造を有する高消光比変調器を作製した[9]。高消光比変調器は消光比調整部と高速光変調部から成り、消光比調整部は従来のY分岐型EOスイッチを静的可変光2図1 高消光比MZ変調器の構造と動作図2 薄膜LN基板を用いた高速光変調器と周波数応答特性48 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)4 アクセスネットワークの大容量化を目指す研究開発
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