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いずれにしても光送受信器前後に煩雑な光回路が必要となりコンパクトかつシンプルなシステム構成が望まれる(図1)。そこで本研究では、上記に掲げた課題点を解決するため、マルチコア・マルチモードからの信号光をシングルモードへ変換することなく、直接一括で受信可能な2次元型高速フォトディテクターアレー(2D-PDA)の開発を行った。これにより今まで必要とされていたファンアウト装置やフォトニックランタン装置を省略することが可能となり、受信系システム全体の小型化、低消費電力、低コスト化が期待できる[11](図2(a)(b))。2次元高速フォトディテクターアレーデバイス       3.1デバイス設計・試作高速2D-PDAにおけるピクセルサイズ及びピッチ間隔はデバイス特性全体を左右する重要なパラメータである。3dB帯域幅、感度のほか、特に隣接ピクセル間クロストークを考慮したデバイス設計が必要である。一般にピクセルサイズが小さいほどフォトディテクター(PD)の周波数特性は高速応答を示すが、ピクセル全体に対して一様に光照射された場合、ピクセルサイズが小さいほど光電流は小さく、感度低下を招く。逆に同一条件で、ピクセルサイズを大きくした場合、1ピクセルあたりの受光量が増加するため光電流は増加するが周波数特性は劣化傾向を示す。さらにピクセル間ギャップを縮めることで不感帯領域が減少しPDA全体の受光感度増加が期待できるが、隣接ピクセル間クロストークの影響が生じる。よってピクセルサイズ、ピッチと周波数特性、受光感度、クロストークとはトレードオフの関係にあり、最適点によりデバイス設計を行う必要がある。今回我々は10 GHz以上で高速動作する6×6(32)ピクセルPDAの設計・試作を行った。ピクセルサイズは受光感度を確保するため主に30 μm×30 μmとした。またPD構造はInP/InGaAs系PIN構造を基本とし、各ピクセルのn-InPを共通とした。光入射は3図1 従来技術によるマルチコアファイバー伝送システム概略図変調器1レーザ光源1変調器2レーザ光源2変調器Nレーザ光源N送信器受光器1信号処理1受光器2信号処理2受光器N信号処理N受信器マルチコアファイバーファンインファンアウト図2 高速2次元フォトディテクターアレーデバイスによる(a)マルチコアファイバー伝送システム、 (b)マルチモード伝送システム概略図(a) (b) 52   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)4 アクセスネットワークの大容量化を目指す研究開発

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