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まず、無線信号波形を光ファイバ信号に重畳する波形伝送を光ファイバ無線技術(RoF)技術の観点から将来無線システムへの適用についての議論の後、無線帯域信号を効率的に圧縮し帯域の限られたFH伝送システムにおいてMIMO(Multi-Input-Multi-Output)信号を効率的に配送するためのデジタル波形伝送技術について概説する。原理的な低遅延と帯域圧縮が見込めるアナログ波形伝送技術を用いたミリ波帯信号伝送技術とその応用について通信応用、非通信応用の事例紹介を行う。光・電波融合アクセス通信技術光・電波融合ネットワーク技術は前述のとおり波形伝送技術を基盤とするものである。波形伝送とは、電波・光など信号の伝送メディアを問わず、送信側から受信側まで信号の波形そのものを伝送する技術であり、それをネットワーク化することで、送受エンド・ツー・エンドで波形そのものを送り届けるものである。一般的な信号伝送では、光伝送時と電波伝送時でその利用可能な帯域幅が異なるため、フォーマット変換が行われる。例えば、毎秒1ギガビットを伝送する光ギガビット・イーサネット等では光のオンオフによりデジタル伝送を行うが、マイクロ波帯無線LAN等においては同じ1ギガビット伝送においてもその帯域幅が制限されているため256値直交振幅変調(QAM)などの多値変復調技術を利用する必要がある。このフォーマット変換では一般的にデジタル信号処理が用いられ、その信号処理遅延により伝送遅延が発生するのに加え、信号処理に伴う消費電力の増加も見込まれる。波形伝送では、例えば、電波伝送のフォーマットそのものを光信号に重畳して伝送するなどすることで、そのフォーマット変換を省力化するものである。そのため信号遅延量を小さくすることが可能となり、結果、低遅延なネットワークの実現が可能である。以下、将来無線アクセスシステムへ適用可能なデジタル・アナログ波形伝送技術について議論する。2.1MIMO無線信号波形の低遅延圧縮・符号化・伝送技術5G等の将来モバイルにおいてBH、MH、FHの重要性が増しており、特にエッジにおける利用効率の格段の向上が急務である。そこで、ネットワークインフラの許容量を超えるような過大な無線信号入力のBH/FHへの収容を可能とするための過負荷信号処理技術について議論する。小セル環境を経済的に実現する無線アクセス網アーキテクチャとして注目されているのがC-RAN(図2)である。RRH-BBU間のFHリンクを延伸化することで敷設・メンテナンスコストの大きいBBUを集約的に実装することが可能となり、セルサイトのコストを大きく低減することができる[4][5]。加えて、集中管理による高度なセル間協調、あるいはBBU計算機資源の有効活用なども期待できる[6]。このC-RANにおいて課題となるのが、FHの帯域と遅延である。簡素化及び低遅延化のためRRHはBBUへデジタル化した無線信号波形を非圧縮(例えばCPRI規格にて)で伝送する手法が従来から利用されてきた[8]。このとき、FH帯域は、帯域≅サンプリングレート×量子化ビット数 同相・実相成分(1)で与えられるが、5Gでは帯域幅100 MHz、32×32 MIMO、量子化ビット数16が想定され、その場合FH要求帯域が100 Gb/s超となってしまう[9]。 そこで、近年、FH帯域要求の緩和のため、様々な無線波形の圧縮・符号化・伝送技術が検討されてきた[10]–[14]。FHにおける圧縮・符号化技術においては、量子化ビット数16ビット程度の高精度とともに、再送制御など無線通信規格の遅延要求により、処理時間100 μs以下での圧縮が求められる[15]。この技術課題2図1 光・電波融合ネットワークの適用範囲⾼精度光信号源光→電気変換精密計測光→電気変換光→電気変換レーダ・イメージング光ファイバネットワーク接続型分散ミリ波レーダ基準信号伝送鉄道追跡型光・電波融合通信システム⾼精度光電変換効率計測ビッグサイエンス向け⾼精度基準信号⽣成・配送次世代通信⾼速・広帯域・⾼精度な光・電波融合ネットワーク技術図2 C-RANアーキテクチャの概念図Mobile BackhaulBaseBandUnit (BBU)Antenna mastFront‐haulOutdoor cabinetBBUBBUBBUBBUBBUBBURemote Radio Head (RRH)Mobile BackhaulBBU Pool58   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)4 アクセスネットワークの大容量化を目指す研究開発

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