HTML5 Webook
64/116
(ADPCM)技術を拡張したものを採用した[19]。従来の時間領域圧縮・符号化技術では、OFDM変調に最適化した(固定的な)非線形量子化手法などが検討されてきたが、 適応的量子化手法の採用により、多様な変調方式の信号波形や空間領域での圧縮に起因する信号波形の分布の変化を容易に取り扱うことができる[12][13]。図5は32×256MIMOの場合の、時間的、空間的圧縮に対する復調後の無線信号のEVM特性である。ここでFH伝送の影響は考慮していない。図より、一定の圧縮率(CR)の下で、最適なEVM特性を与える時間・空間的圧縮率の組があることがわかる。なお、ここでCRは従来のCPRI規格[8]に対する圧縮率として定義しており、図3の空間的、時間的、また光帯域の圧縮を行うFHの圧縮率は、≈⏟ ∙∑(+1)=1(+1)− ⋅6664− (2)で与えられる。ここで、 K(>P)は空間的圧縮後の空間次数であり、 は空間フィルタのi番目(=1、 ⋯、 )の出力に対応するADPCMの量子化ビット数であり、 =15 [bit] (+1の項は符号に由来する)。またRは光変調多値数である。 一方、図6は判定帰還型等化器を用いた場合の光PAM4信号の変調速度対ビット誤り率(BER)特性である。変調速度を低減すると、 光伝送におけるBER特性が改善する一方で、 FH帯域が制限されるため無線信号をより圧縮する必要が生じ、 結果、非可逆圧縮に由来する無線信号の品質劣化を引き起こす。逆に、変調速度を向上した場合、圧縮による信号劣化は低減するものの、FH伝送におけるBERが増大し、無線信号のEVM特性の劣化につながる(低遅延化のため、ここでは誤り訂正技術の使用を想定していない)。図7は、 FHの光帯域幅(変調速度)に対する、再構成後の無線信号のEVM特性である。ここで、時空間の圧縮率は、図5に従い、FH帯域に応じてそれぞれ最適化している。図7より、時空圧縮・符号化及びFH伝送の変調速度を同時最適化することで、例えば、32×256 MIMOの場合、従来のCPRI規格では260 Gbaud相当(OOK変調)のFH帯域が必要だったところを、25分の1程度(≈4[%] )の、10 Gbaud光インターフェースでFH伝送可能であることがわかる。このとき非可逆圧縮による無線信号品質の劣化はEVMにして0.7%以下であり、1024 QAMなどの多値変調も利用可能な品質が保たれている。2.2無線波形カプセル化によるアナログ波形伝送システムアナログ的な波形伝送は同軸ケーブルによるRF伝送など古くから利用されているが、同様の波形伝送は光領域でも実現可能である。伝送させたい信号波形を図6 光PAM4伝送の変調速度対BER特性図7 FH帯域幅対再構成後の無線信号のEVM特性図5 時空間の圧縮率対EVM特性(P=32)60 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)4 アクセスネットワークの大容量化を目指す研究開発
元のページ
../index.html#64