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光信号に重畳させるアナログRoFシステムは、その原理的な低遅延性及び構成の単純性によりシンプルなFHリンクが構成可能であり、低コスト化が必要な小セルネットワークへ適用も可能である。しかし、前述のとおり超高密度小セルが想定される大都市部においては地形及びコストの観点から光ファイバを敷設することができない場所もある。このような場合、ミリ波帯電波を利用して光ファイバの代わりとなる大容量無線リンクが必要となる。光ファイバネットワークとシームレスかつ低遅延な接続が可能な光・電波融合システム・アナログ波形伝送技術が有用である[20]。加えて高周波帯ミリ波電波はモバイル等のマイクロ波帯信号に比して広大な周波数帯域幅を持つため、従来のモバイル、IoT(例えばIEEE802.11ah)などの複数の無線サービスを一括してミリ波信号へ重畳・カプセル化し、それをアナログRoFシステム上で光ネットワーク伝送することも可能である[21]。図8に、従来モバイル、IoT無線、将来モバイルの3種の無線信号を光ファイバ・ミリ波ブリッジリンクを介して伝送するための実験構成を示す。光伝送・ミリ波無線伝送・光伝送という伝送形態となるため、ファイバ・ミリ波ブリッジリンクと称する。高精度光変調技術を用いて、入力信号周波数の4逓倍周波数を発生させる光・ミリ波信号を生成する[22]。本原理検証試験では、92 GHzの周波数分離を有する光・ミリ波信号を生成させた。伝送させる無線信号として、将来モバイルを模擬する50 MHz帯域幅OFDM信号(中心周波数3 GHz)、周波数2.6 GHzのLTE-Advanced準拠信号及び920 MHz IEEE802.11ah準拠信号を用いた。これら無線信号はベクトル信号発生器(VSG)により生成され、合成後、MZMにて光変調を行った。エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)によって増幅後SMF伝送し、リモートアンテナ装置(RAU)に配置された光受信器(PD)にて92 GHzの無線信号に直接変換される。無線信号はパワー増幅器(PA)によって信号レベル調整され、23 dBi標準ホーンアンテナによって自由空間に放射される。約1 m空間伝送後、同型のホーンアンテナによって受信され、低雑音増幅(LNA)と自己ホモダイン検波(SHD)受信機を使用して元の無線サービス周波数帯であるマイクロ波帯域にダウンコンバートされる[21]。マイクロ波無線信号は、それぞれLNAによって増幅され、RoF送信モジュール(RoF Tx)に入力され、5 kmのSMF伝送後、RoF受信機モジュール(RoF Rx)によって電気信号に変換されベクトル信号解析装置(VSA)によってオフライン解析を行った。図9にファイバ・ミリ波ブリッジ伝送後の受信EVMを示す。すべての信号が満足のいくパフォーマンスで正常に伝送されたが、OFDM及びIEEE802.11ah信号ではファイバ色分散の影響から長距離伝送時に劣化することが見てとれる。ファイバ色分散の影響は単側波帯(SSB)変調を用いることで解消が可能である[21]。2.3中間周波数帯域を有効活用したIF over Fiberシステム一般的にミリ波帯RoF伝送は光ヘテロダインによる周波数変換方式であるため、所望周波数だけ離調し図8 ファイバ・ミリ波ブリッジリンクにおける大容量信号伝送の原理検証実験系CSPDRAURAUMZMOpt. two-tone gen.?1?2fVSG1VSG2VSG3OFDMLTE-A802.11ahCombinerPAATTLNAPALNAEDFARoFTxRoFRxVSA 図9 EVM計測結果: (a)50MHz幅OFDM、(b) 10MHz幅IEEE802.11ah信号、(c)1.4MHz幅LTE-Advanced信号、(d)20MHz幅LTE-Advanced信号614-3 光ファイバ無線技術 ~光・電波ネットワークのシームレスな融合に向けた波形伝送技術の研究開発~

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