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た光信号を生成する必要がある。つまり、92 GHz帯信号発生には92 GHz離調した2つの光信号が必要であり、実効的に光領域における周波数利用効率は低下する。そのため、直接的なRF信号周波数帯ではなく、中間周波数帯(IF)信号を用いるRoF(以下、IFoF)システムが、単純でコスト効率のよい手法となり得る。加えて、波長分割多重(WDM)方式を用い、アンテナサイトごとに波長チャネルを割り振ることで、適切な信号を効率よく配送することが可能になる。WDM波長の1つを局部発振器(LO)信号配送に用いることで、中央集約生成した光LO信号をリモートアンテナサイトへ配送することも可能になり、アンテナサイトの低コスト化のみならず中央制御による周波数の適時変更も可能となる[23]。図10にWDM IFoFシステムによる96 GHz帯高速無線伝送原理検証システムを示す。本実験では、4波長信号を光IQ光変調器にて光SSB変調を行い生成する。変調するIF信号として中心周波数6 GHz、 帯域幅5 GHzのOFDM信号を用いた。光LO信号として上述の光4逓倍手法により90 GHz光・ミリ波信号を用いた。光SSB-IF信号と光LO信号は光カプラにて合波後、EDFAによって増幅され、20 kmのSMFを介してアンテナサイトに配送される。アンテナサイトでは、光カプラ及び光バンドパスフィルタ(OBPF)を用いて光LO及び光SSB-IF信号を分離し、PDで変換されたIF信号と90 GHz LO信号が混合され96 GHz帯の無線信号が生成される。ミリ波信号はPAによって増幅された後ホーンアンテナによって空間放射される。約1 m伝送、アンテナ受信後にヘテロダイン検波によりIF帯域にダウンコンバートされる。IF信号増幅後にリアルタイムオシロスコープにてデジタル変換されオフライン信号処理の後復調処理を行った。図11(a)にPD入力前の光信号スペクトルを、図11(b)に異なる光チャネル及びミリ波リンクを介して伝送された後の20 Gb/sミリ波信号の復調EVMを示す。波長チャネルの選択はPDに前置したOBPFにより行った。ミリ波送信電力–26 dBm以上で16QAM信号に対して十分な復調品質が得られることがわかる。受信アンテナの出力感度約–50 dBmに相当するものであり、IFoFシステムにおいても光・電波融合型波形伝送が可能であることが示された。2.4高速波長切替型光ファイバ無線ネットワークの原理検証5Gモバイル含む将来モバイルネットワークにおける困難なユースケースの1つとして高速鉄道への大容量通信が挙げられる。時速300 kmを超える速度で移動するユーザに対して高いスループットを有するサービスを提供するためには、高速移動時にも途切れない無線接続が必要である。シームレスな光・電波融合システムに適応的な信号配送手法を組み合わせた高速鉄道向けネットワークが提案されている[23][24]。図12に提案システムの基本概念を示す。本システムでは(1)無線サービスセルを線形配置させたリニアセル構成、図10 光LO信号配送を利用するWDM IFoFシステムにおけるミリ波信号伝送実験システム図E/OCenterE/OIF signalLO signalFilterFilterO/EX MAntennaLD_2LD_3LD_1LD_4Power CombinerUELOmmWaveO/E図11WDM IFoFシステム検証結果:(a) WDM IFoF信号の光スペクトル、(b) 計測されたEVM(a)(b)62 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)4 アクセスネットワークの大容量化を目指す研究開発
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