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(2)ハードハンドオーバを低減させるための複数セル同時信号配信、(3)列車位置情報を利用した予測・追跡型ネットワーク切替技術である[23]。ユーザは列車内に配置した無線基地局(BS)に高速無線LANなどで接続し、車上BSと線路側に設置されたRAUは、大容量ミリ波帯電波による無線システムで接続され、多数設置されるRAUへはWDM型光・電波融合システムにて接続・制御される。つまり、この鉄道向け高速無線システムはBHとして機能する。RAUへは各波長チャネルが割り当てられ、中央局から配信されるRoF(もしくはIFoF)信号は列車の位置に応じて中央制御側で適切な波長にセットされる。WDMネットワークを介して光スイッチもしくは高速波長可変光源により車上BSに近いRAUへ信号が配送される[24][25]。波長スイッチが遅いと車上BSへのスループットが低下することから、超高速な波長スイッチ(例えば10 μs程度以下)を実現できる超高速波長可変レーザが候補の1つとなる。つまり、鉄道司令所から得られる列車位置情報を用いてレーザ波長を制御し、中央制御局から列車が存在する無線セルに信号を適時配信・追跡することで、見かけ上基地局切替え(ハンドオーバ)のない接続が可能となる。大容量接続にはミリ波等の高周波電波を用いることが肝要であるが、上述のWDM IFoFシステムを援用することで所望のネットワークが構成できる。光LO信号も同じWDMファイバネットワーク上を伝送することで、ファイバを介して多くの無線セルに送信することができ、ミリ波帯単一周波数ネットワークが容易に実現できる。また、リニアセル構成によりアンテナ利得及びセルサイズの最適化設計も容易となり、結果、エネルギー効率の最適化も見込める[26]。図13に実験室内における原理検証実験のシステム図を示す。IF帯光信号はWDMファイバネットワーク上を伝送し、RAUにてミリ波帯変換され、車上BSに無線接続される。各RAUが張る無線セルをWDMネットワーク上で切り替えるため、超高速波長可変レーザ(TLS)を用いる。TLSからの光信号は、IQ光変調器により中心周波数7 GHzのOFDM信号(帯域幅6 GHz、サブキャリア数512)で光SSB変調される。20 kmのSMF伝送後に、EDFAにより増幅後WDM波長ルータに入力される。WDMルータから出力される光信号はそれぞれ波長に対応するRAUに接続され、RAU内でIF・ミリ波変換が行われ95 GHz帯ミリ波信号が生成される。ミリ波変換には上述の光LO配信とヘテロダイン方式が採用されている。原理確認試験のため、ホーンアンテナから放射されたミリ波電波信号は2 m空間を伝送し、アンテナ受信後にヘテロダイン検波方式にてオシロスコープで検出し、その後オフラインデジタル信号処理にて復調・解析を行った。伝送試験結果を図14(a)に示す。ミリ波帯接続容量と図12WDM IFoFネットワークによる通信途絶のない高速移動用バックホールネットワークの概念図ASNλ1, λ2λ3, λ4Control OfficeWDM RoFTx.λ n-1, λnSignal Processing UnitsModulationTrain Operation CenterSwitchSwitch controlWavelength-tunablelaserTrain InformationWDM Router図13波長切替型WDM IFoFによるミリ波信号伝送システムの原理検証試験ブロック図LO signal distributionPDPARAU1λ1λ2λ3λ4RAU2RAU3RAU4LO signalRxRx on trains20 kmController(PC)TLSAWGSSBOptical local oscillator signal generationDividerXXWDM wavelength router図14(a)得られた受信EVM値と(b)波長切替えによる無線セル切替えの様子(a)Uplink3.67 μs(b)634-3 光ファイバ無線技術 ~光・電波ネットワークのシームレスな融合に向けた波形伝送技術の研究開発~
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