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して20 Gb/s以上の伝送が可能であることが示された[27]。また、ハンドオーバ時間の検証のため、波長切替え時の通信途絶時間も確認したところ、10 μs以下でセル間切替えが可能であることが示された(図14(b))[23]。本提案スキームを用いることで、高速列車への大容量かつ通信途絶の少ない無線通信を光ネットワークから制御できることが示されたと言える。また、車上BSから路線側への無線接続についても検証を行っており、波長100チャネルのWDMネットワークを介して10 Gb/s以上の信号伝送が実現可能であることも示されている[28]。光ファイバ無線技術による分散型ミリ波レーダの実現光・電波融合システム、特にRoF技術の将来モバイル・高周波通信向け適用について議論してきたが、光LO信号配送にも代表されるように光クロック・基準信号配送にも応用が可能である。例えば、電波天文における受信アンテナ群のクロック同期が挙げられる[29]。中央制御局に設置された高精度基準信号源から光ファイバネットワークを介して遠隔設置してある装置へ配送する手法がすでに実用されている。分散アンテナシステムと呼ばれるこのアーキテクチャでは、信号の高精度な同期だけでなく、高精度信号源の設置数削減にも応用可能である。その応用の1つとして、空港滑走路面異物検知システムを紹介する。滑走路上に落下した異物を天候・昼夜にかかわらず迅速に検出することが、空港管制上の安全に直接的に寄与することは想像に難くない。特に基幹・ハブ空港など時間あたりの離着回数が40回を超える混雑空港においては、異物検知を数分以内で終える必要がある。しかしながら、広大な滑走路(長さ3,000 m以上、幅60 m)上で数cmの異物を数分以内でスキャンすることは非常にチャレンジングである。一般的に、数cm程度の異物、特に金属異物は、1/10 程度の波長の電波レーダで検出が可能である。無線標定として割り当てられる92–100 GHz帯(波長およそ3 mm)の8 GHz帯域幅ミリ波電波をレーダとして利用することで、数cm程度のレーダ距離精度で小異物を検出できる可能性がある[30]。しかしながら、そのような高精度なレーダを実現するためには、高精度なレーダ信号源が必要であり、高コスト・大設置面積に加えて、ミリ波本来の自由空間伝搬損失の大きさから、滑走路全体をカバーするには10台程度のレーダを設置する必要がある。そこで、光・電波融合技術を用いて信号源を中央集約化し、高精度なレーダ信号を、光ファイバネットワークを介して複数のレーダ装置へ配信することで、レーダとしての機能劣化なしに総コストの削減が可能である[23]。図15にその概略図を示す。中央制御装置に設置された高精度レーダ信号源からRoF技術によりミリ波信号を光ファイバ信号に重畳させる。光ファイバネットワークを介して滑走路脇に設置されたレーダ装置へレーダ信号そのものを配送し、ミリ波変換の後にレーダ信号として放射する。ターゲット(異物)で反射された信号はレーダ装置で混合されアナログ・デジタル変換の後に光ファイバネットワークを介して中央信号処理装置へ集約され、レーダ複数台の信号処理結果を表示する。高価かつ消費電力の大きい信号発生・信号処理を中央集約化することでエネルギー効率を最適化する手法は上述のC-RANと同じである。図16に得られるレーダPPI画像例を示す[31]。滑走路脇に設置された滑走路灯なども明瞭に検出することができていることが見て取れる。なお、本システムは日立国際電気株式会社、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所電子航法研究所、早稲田大学と共同で成田国際空港にてフィールド試験中であり、光・電波融合システムの社会システム実装の例として挙げた。おわりに将来モバイル・レーダシステムへ向けた波形伝送技34図15光・電波融合型リニアセルによる空港滑走路面異物検知システムの概略図ミリ波帯分散アンテナレーダーファイバ無線RoFネットワーク滑⾛路上異物⾼精度レーダ信号源中央集約信号処理部図16 1つのレーダより得られる滑走路PPI画像の例[31]64 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)4 アクセスネットワークの大容量化を目指す研究開発
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