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大容量かつ長距離伝送が行われてきた。一方、メトロ・アクセス網ではROADM(reconfigurable optical add/drop multiplexer)等の技術により多数のノード間で信号を出し入れすることを可能にしたネットワークが構成されてきた。さらに、データセンタでは数千台~大規模なもので数十万台規模のサーバをパケット伝送により連携してサービスを行っているが、多くの情報が集まってしまうスイッチへの負荷は大きく、スループット拡大や低消費電力化が課題となっている。それらの課題に対応するため光と電気を融合させた光パケットネットワーク技術が提案されており、現在、光が用いられているのは機器間をつなぐための伝送に用いられているが、将来スイッチングを含めたより広い範囲で光を用いたデータセンタネットワークの実現が期待される。このように、コアネットワーク、メトロ・アクセスネットワーク、データセンタネットワークは、異なる特性を実現するため異なるネットワークとしてそれぞれ展開されている。定性的にそれらをまとめると図1(右)のように対比的な特性となっていることがわかる。トラフィック変動という観点ではデータセンタ内では仮想化されたサーバが連携して、サービスに応じて複雑に連携して動作しており、データの移動や計算の分散、集約が活発に行われており、突発的な通信量の変動が発生する。一方、コアネットワークでは、回線を定常的に確保して一定の通信容量で大容量伝送を安定に実現している。また、伝送距離についてはデータセンタネットワークでは基本的にデータセンタ内で通信が行われればよく、大規模なデータセンタであっても数km程度の伝送が行えればよい場合がほとんどであるが、コアネットワークは数百km程度の伝送が求められる。ネットワークの機能として経路を切り替える場合があるが、データセンタにおいては、必要に応じて自由にデータをやり取りしており、遅延なくデータをやり取りするためには高速な経路の切替えが必須となる。一方、コアネットワークでは伝送容量をあらかじめ見越して回線を設定するため、経路の切替えはごくまれである。これらの特性の違い、すなわち、階層性をなくし一気通貫で柔軟なネットワークを実現するためには、例えばGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switch-ing)等のように、すべてを包含するようなネットワーク方式を用いる方法も考えられるが、本稿で紹介する大規模フラットネットワークは、ネットワーク間の特性の違いを超高速のスイッチ技術やモニタ技術、制御技術等により、吸収・協調させ、大規模化・フラット化を目指すものである。次節で大規模フラットネットワークの構成やそれらを実現するための基盤技術の構成を紹介する。2.2大規模フラットネットワークの構成大規模フラットネットワークでは、超高速のスイッチによりネットワークに可変性を持たせ、ハードウエアとソフトウエアの連携により柔軟で大規模なネットワークを提供する。大規模フラットネットワークは大きく2つの技術から成っている。1つは「弾力化制御アシスト高速スイッチングネットワーク技術」で、ネットワーク間の特性の違いを吸収・協調させ高速スイッチングにより、言わば時間のフラット化を実現するものである。もう1つは「大規模化ネットワーク技術」で、大規模なネットワークを構成する際にも光のトランスペアレント性を生かして様々な帯域・変調形式適用させることができるようにネットワーク全体をニーズに合わせて協調させる技術であり、言わば、距離のフラット化を実現するものである。「弾力化制御アシスト高速スイッチングネットワー図1 現在のネットワーク構成(左)とその特徴の対比(右)コアメトロユーザデータセンタ68   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)5 光ネットワークのフレキシビリティ向上を目指す研究開発

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