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ネットワーク運用を行うためには、任意の経路で、かつ、運用状態に応じて様々な伝送方式に対応した光信号品質モニタ・監視技術が必要となる。現在、実用化されている光信号モニタ技術としては、光伝送装置内において光信号の波長及びその強度をモニタする光チャンネルモニタや、送受信機に実装されている誤り訂正符号処理の訂正ビット数から信号品質を見積もる品質モニタ方式があるが、そのような技術では、信号劣化の要因特定や、各スパン個別の劣化分を見積もることは困難である。そこで、本研究開発では、実用化が進むデジタルコヒーレント受信技術を活用し、光信号の強度、位相、偏波情報などから伝送路の物理的な状態を送受信機間でモニタし、加えてスパンごとでのリンク情報をコヒーレント受信機などの高価な部品を必要とせず、波長可変フィルタや低速のフォトダイオードなど簡易な構成でのモニタを実現する光モニタ方式の検討を行い、フラットネットワークにおけるエンドツーエンドでの柔軟なパス設定を担保するための実時間でのネットワーク情報を取得可能なモニタ方式の研究開発を進めている[4][5]。図4は開発したOSNR(OSNR:Optical Signal Noise Ratio)モニタの計測方法を示している。このモニタは受光器(PD:Photo Detector)によって検出される光信号強度の直流成分と、光信号と光ノイズとの干渉信号が支配的となる交流成分を抽出し、それを分析することでOSNRを算出する方式であり、簡易な光部品と、1MHz以下の周波数領域で動作する低速な電子部品を用いて構成可能である。ROADMノードで用いられる光チャンネルモニタと共用化が可能であり、電気バンドバスフィルタ及び交流電力計測の回路部分等のみの追加による簡易な構成で実現できる。試作したOSNRモニタユニットを図5(上)に示す。また、疑似的にノイズを付加した際のモニタ推定値との誤差を評価した結果を図5(下)に示す。16/8QAMやQPSK等の信号フォーマットによらず0.5 dB以下の誤差で推定可能であることを確認している。また、光ファイバ伝送路で発生する偏波依存損失をモニタする方法として、デジタルコヒーレント送受信技術を基にしたモニタ方式についても検討を行った。この方式はデジタルコヒーレント伝送において適応等化補償を行うためにも使用されるトレーニング信号において、送信器側で、通信を行う主信号データに追加して特定の4つの偏波状態信号を付加し、受信側で検出される各偏波状態信号の信号光強度を基に、偏波依存損失を算出するものである。原理確認実験を行い、誤差0.6 dB以下の良好なモニタ特性が得られることを実証している。これらのモニタ技術は既存構成品と簡易な部品追加や計測工程を追加するのみで実現可能であり、大規模フラットネットワークを構成する各ノードに容易に設置可能で、動的に設定される任意経路のネットワーク運用を可能にする。3.3大規模ネットワーク制御技術大規模フラットネットワークにおいては、将来の多様なサービスを提供するうえで必要となる、高速な光スイッチングを含む様々な光伝達モードをサポートするとともに、光のトランスペアレント性を生かして様々な帯域・変調形式を適応的に利用できる高いスループットと信頼性や可用性等のディペンダビリティを実現する効率的な制御法が必要とされる。本研究開発においては、大規模ネットワーク制御基盤技術として、百ポート以上のファイバを収容可能な大規模から数ポートの小規模なノードを含む、数百ノードから構成される大規模フラットネットワークのアーキテクチャ及びそれを制御するための技術の創出を目指している。そのようなネットワークを実現するためには、大規模なネットワークを構成した場合でも、光ファイバの周波数利用効率を維持し、波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)を多段に透過することにより発生する波長フィルタ帯域の狭窄化の影響を緩和して、トランスペアレント領域の拡大を可能とすることが必要となる。本研究開発においては、図5 OSNRモニタ(演算処理部を含む)(上)と誤差の評価結果(下)715-1 大規模フラットネットワーク基盤技術
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