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[5]。日々生成されるデータは2.5 Exabyte (1018)と言われており、これは文明の黎明期から2003年までに生成されたデータの約1/2に相当すると言われている。なかでも注目すべきは、センサーやモバイルデバイスからのトラフィックが2021 年までに IPトラヒック全体の63 % を超えると予測されていることである[4]。IoTサービスは多種多様でネットワークに対する要求条件も千差万別であり、センサーデータの質・量もまちまちである。環境汚染の監視、スマート農業、ライフログ用スマートウォッチなどでは、多ノード、データは時間的にスパースで少量といった特徴があり、自動運転や工場の作業ロボットなどではデータ転送時間に対する要求が厳しい。図1の下段の左側は低遅延時間が必要な自動運転、作業ロボット制御、拡張現実(AR:Augumented reality)などのIoTサービスを示しており、1msを境として右側には工場の製造設備監視や製品検査、スマートグッド、大気汚染監視、スマートアグリなどの遅延時間に対する要求が緩いサービスが並んでいる。遅延時間とは、あるイベントの発生した地点でセンシングされたデータがデータ処理を実行する地点に到達するまでに要する時間と定義される。データの分析はデータセンターのクラウドコンピューティングを利用するが、低遅延時間の要求を満たすためには、なるべくデータが生成されるネットワークのエッジでデータ処理を実行したい。これらのことからIoTを支えるネットワークは有無線を問わず一体としてとらえ、IoTデータ処理に供されるネットワーク域内のクラウドの計算リソースの配置も考慮に入れなければならない。本稿では、IoTを支える有無線ネットワークの現状と今後を俯瞰して、研究開発の方向と取り組むべき技術課題について考察する。まずIoTサービスのためのフォグコンピューティングを紹介する。次にIoTサービスを支えるネットワークを特徴付ける“Deter-ministic”と“Cognitive”に焦点を当て、次世代 (5G)モバイル通信における超信頼・極低遅延通信のDe-terminismとCognitive光ネットワークのシナリオを述べ、実現のための課題を挙げる。最後に、関連分野の委託研究の現状を紹介する。クラウドからフォグへコンピュータなどのハードウェアとそれを動かすOSとアプリケーションプログラムを持たなくても、インターネットで接続できる環境さえあればクラウドが全てを提供してくれる。クラウドコンピューティングのサービスを提供するのは、通常コアネットワーク内に設置され大規模データセンターである。センサーデータが生成される地点からデータセンターまでデータ転送には150~200ms程度かかるといわれている。図1の下段のIoTアプリケーションの中でも左側の工場ロボット、自動運転、仮想現実では遅延時間を1msまで低減することが求められている。次章で説明する超高信頼・極低遅延通信(URLLC)を実現するためには、IoTデバイスとクラウド間の伝播遅延を短2図1 IoTを支えるネットワークとクラウド&フォグコンピューティング4   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)2 IoTを支えるネットワークの実現に向けて — DeterministicとCognitiveが鍵 —

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