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群1、2を削除した場合、残存する光パス群3への光増幅器の利得が増大し、過大な出力光信号強度となる。よって、光信号強度が光受信器の最適な受信強度範囲から外れるなど、伝送品質(QoT: Quality of Transmis-sion)が劣化する可能性が高くなる。このため、通信需要にかかわらず入力光信号強度を一定とし、通信中に光信号を切り替えない運用方法を取らざるを得ない。そこで我々は、光ネットワークにおける通信サービス要求の動的変化への対応や通信障害時における通信の維持を目指して、任意の数の光パスを高速に提供可能なフレキシブル光パス交換技術の研究開発を実施している。本稿では、我々がこれまでに開発してきた利得変動を抑制するバーストモード光増幅器の特性や、本増幅器を導入したフレキシブル光パスノードについて紹介する。また、これまでに得られた成果として、残存する光パスに過渡的な信号劣化を起こさず、従来の10分の1以下の時間で4波長の光パスを一括設定可能であることを示した実証実験の結果や、通信障害発生時において従来光増幅器が与える悪影響がネットワーク全体に及ぶことを示したシミュレーション結果などについて述べる。フレキシブル光パスノードとバーストモード光増幅器  新しく提案した光交換装置であるフレキシブル光パスノードの構成を図2に示す。従来のROADM(Re-configurable Optical Add/Drop Multiplexer)やOXC(Optical Cross Connect)などの光交換装置との差違は、光強度変動抑制のためにバーストモード光増幅器を新たに導入し、従来の機器と置き換えたことである。光パスノードの主な機器の機能及び動作について述べる。波長選択光スイッチ(Wavelength Selective Switch: WSS)は、光パスの設定/解放などの光パス経路制御時に、隣接ノードや自ノードから入力された光信号の経路を適切な宛先に向けて切り替える。光増幅器は、光信号が各機器や光ファイバを通過する際の強度損失を補償するために、ノード入力時や出力時に光信号強度を増幅する。可変光減衰器は、光信号に光強度変動があった場合、波長別に光強度が一定になるように調整する。現在、WSSはこの可変光減衰器としても用いられている。WSSの動作速度はミリ秒程度である。複数波長の光パスの設定/解放が行われる場合及びリンク障害が発生した場合、光増幅器へ入力する光信号強度の総和が瞬間的に大きく変動する。一般的な光増幅器であるEDFA(Erbium doped fiber amplifier)を用いた場合、入力光信号強度の急激な変化により過渡応答が生じ、出力光強度が変化しQoTが劣化する可能性がある。この問題に対して、バースト光信号による過渡応答を抑圧するために、我々は大口径の特殊なファイバを用いて固有飽和電力を大きく設計したバーストモードEDFA[3]を開発した。また、補助的な利得変動抑制技術である光帰還ループによる利得クランプ手法を導入し、長い時間スケールでも利得変動の抑制効果を持たせた光帰還ループ型バーストモードEDFAを開発した[4]。ここでは、複数光パスの設定/解放時における、定常状態でのバーストモードEDFAの利得変動特性を評価した結果を示す[5]。市販EDFA及びバーストモードEDFAに、光パス群と見立てたCバンド帯(1530nm–1565nm)のほぼ2図1 複数光パスの設定/解放時における既存の光増幅器の利得変動を原因とした残存光パスへの光強度変動の発生WSSOpticalamplifierλSpectrumλλtTemporal waveform (A path of OPG3)OPG1OPG2OPG1OPG2OPG3OPG: Optical Path GroupOptical nodeOPG3WSSOpticalamplifierλSpectrumλλtOptical nodeDeleteReceivablepowerrangeReceivable power rangeTemporal waveform (A path of OPG3)OPG1OPG2OPG3OPG3 図2 フレキシブル光パスノードの構成VOA: Variable optical attenuatorWSS: Wavelength selective switchTx.: TransmitterRx.: ReceiverBurst-modeamplifierBurst-modeamplifierBurst-modeamplifierBurst-modeamplifierWSS(VOA)WSSWSS(VOA)WSSTx.Rx.Tx.Rx.Tx.Rx.光送信機光受信機光送信機光受信機光送信機光受信機光送信機光受信機Optical SwitchOptical node (OXC,ROADM)78   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)5 光ネットワークのフレキシビリティ向上を目指す研究開発

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