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ここで、複数波長の光パスが設定/解放された場合でも残存する光パスに過渡的な信号劣化を起こさず、通信品質を保ったままで、迅速な複数波長の光パスの再設定が可能であることを実証する。図6に、実証実験の測定系を示す。実験には1531.90 nmから1563.05 nm までの100 GHz 間隔40 波長チャネルを波長資源とするネットワークを用いた。光信号の入出力には固定100 GHzグリッドのWSSを用い、40波長(λ1~λ40)の光信号を伝送可能とする。全ての10 Gbps光送受信機(光送信機A、B、C、光受信機A、B、C)はルータテスタに接続され、各波長光パスで7.5 Gbpsデータが送信される。初期状態(状態1)では、6波長の光パス(λ8、λ9、λ13、λ16、λ19、λ31)が設定されており、ノード1とノード2の間で接続されたシングルモード光ファイバに多重化されて伝送される。その後、光送信機Aから4波長の光パス(λ13、λ16、λ19、λ31)は、WSSにより従来手法では1波長ごとに、提案する手法では同時に解放される(状態2)。さらに、光送信機Bからの4波長の光パスは、従来手法、提案手法ともに4波長同時に設定される(状態3)。ノード1の出力部には、伝送路である光ファイバの減衰を補填する光増幅器を実装した。光増幅器には、被試験デバイス(DUT: Device under test)として、従来技術のEDFA若しくはバーストモードEDFAを配置した。DUTの違いにより伝送される光信号及び受信された信号をそれぞれ比較する。ノードコントローラ1及び2は、光信号を適切な方向に送るためのWSS-A及びWSS-Dをそれぞれ制御する。さらに、WSSに内蔵されたVOAの値も設定する。ノード1の光送信機Cからは2波長光パス(λ8、λ9)がノード2に送信される。図7(a)に従来のEDFAを使用した場合の状態1、2のスペクトル波形、図7(b)にλ8光パスの時間波形、図7(c)にλ8で送信されたデータのビットレートを示す。光送信機Aからの4波長信号が解放(状態2)されると、残存するλ8の光信号パワーは、従来技術EDFAの利得が大きくなり図7(b)に示すように光信号パワーを激増させる。このとき、図7(c)に示すように受信データは0となり、データ送受信ができなくなった。一方、提案するシステムでは、過渡的な入力光信号のパワー変動があってもバーストモードEDFAが増幅出力光信号の利得変動を抑える。図8(a)に、バーストモードEDFAを使用した場合の状態1、2のスペクトル波形、図8(b)にλ8光パスの時間波形、図8(c)にλ8で送信されたデータのビットレートを示す。バーストモードEDFAを使用した場合、状態 2から状態 3に変化してもλ8光パスの光信号パワーは図8(a)、図8(b)に示すように同じパワーのままであった。したがって、図8(c)に示すように、データの損失は観察されなかった。この実証実験では、使用できる光送受信機の数的な制限により4波長光パスの処理時間を測定した。4波長光パスを同時に解放する処理時間は約9秒だった。一方、従来どおり4波長光パスを1波長ずつ個別に解放した場合は約135秒かかった。提案するシステムでは複数波長信号を同時に制御する並列パス処理を用いているため、使用できる光送受信機の数が増え処理する波長光パス数が増えても、処理時間は1波長を処理するのと同じ約9秒となる。また、状態の変化時間はWSSを制御する評価ボードとノードコントローラの応答時間で決まっている。評価ボードの応答時間を早くすることで処理時間は更に短くなる。このように、バーストモードEDFAを用いることで可能となる並列処理方式により、複数波長の光パスの設定/解放やリンク障害時のバックアップ光パスの高速設定が可能となる。図6 複数光パス設定/解放の実証のための実験系C-planeWSS-ANode1Opt.Trpns. C1234MonWSS-D1234Node2Opt.Trpns. ANode Controller 1Node Controller 2EthernetSMF10:1Opt.Trpns. Bλ8, λ9Host 1Host 2λ13, λ16, λ19, λ31λ13, λ16, λ19, λ31Router TesterOpt.Trpns. COpt.Trpns. AOpt.Trpns. BRouter Testerλ13, λ16, λ19, λ31λ13, λ16, λ19, λ31λ8, λ9DUT(Conventional or burst-mode EDFA)80   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)5 光ネットワークのフレキシビリティ向上を目指す研究開発

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