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物理インフラ提供者(InP: Infrastructure Provider)が各VNに対して異なる物理資源、仮想NF(vNF)、もしくはフロースペースを割り当てることで、VN同士を分離できる。通信ビジネス市場においては、例えば、モバイルVNO(MVNO)が既に、他のキャリアから物理回線及びサーバを借りてVNサービスを提供している。同様に、NFの仮想化(NFV:Network Function Virtualization)によって、複数のvNFsを共通の汎用サーバで構成された基盤上でソフトウェアで実装可能となり、CAPEX/OPEXを低減できる。vNFとしては、例えば、ファイヤウォール、アドレス変換(NAT:Network Address Translation)、パケット検査(DPI:Deep Packet Inspection)、メディア変換、映像解析、コンテンツキャッシュ、ネットワークコーディング、認証機能等があげられる。ネットワーク仮想化及びNFVは、限られた物理ネットワーク資源や計算機資源を有効活用し、ユーザごとに要求が異なるサービスを提供するための有望な技術である。2.2サービス機能チェイニング複数のvNFsによるトラヒックのネットワーク内処理を実現する技術として、サービス機能チェイニング(SFC:Service Function Chaining)が注目されている [6]–[11]。SFCとは、各VNにおいて、必要な複数のvNFsを分散配置し、特定の経路に沿って転送されるパケットに対して適切な順番でネットワーク機能処理を施すための仮想的なサービス機能チェインを構築する技術である。仮想ネットワーク上で、柔軟なvNFsの動的配置や、ユーザ要求に応じて動的に特定のvNFの追加または削除が可能である。SFCアーキテクチャの基本設計について、IETFがRFC 7665 及び RFC 8300 を発行しており [6][7]、さらに、ソフトウェアデファインドネットワーク(SDN:Software De-fined Network)基盤及びNFV基盤に基づいたSFCアーキテクチャが、ETSI GS NFV-EVE 005 V1.1.1において提案されている [8]。2.3VN及びサービス機能チェインの構築VNOは、アプリケーションサービス提供者からの仮想ネットワーク構築要求を受信した際に、QoS要求レベルとネットワーク状況等を基に、エッジ・コア・データセンタで構成される物理ネットワーク上にVNを構築する [10]–[15]。VN構築の際、論理トポロジ作成及び仮想的なネットワーク資源・計算機資源の選択が行われ、VNOがInPに対して物理資源を要求する。InPは、図1に示すような、仮想資源から物理資源へのマッピング処理(VNエンベッディング)を行い、その結果を基に、VNOに対して物理資源を提供する。各VN上では、複数のノード上に様々なvNFsを分散配置するSFCを行うことで、伝送パケットに対して複数ノードでネットワーク内処理を施すためのサービス機能チェインを仮想的に構築できる。そして、パケットの転送経路であるサービス機能パスが決定され、初期VN構築のための各種機器設定が行われる。2.4自動化の必要性現在の手動によるネットワーク構築及び再構成は通常、長期間(2週間程度)を要することが多く [16]、VN上のサービス機能チェインの構築も同様の期間を要することが考えれる。したがって、ネットワーク設定時間の短縮による迅速なサービス提供、さらには人為ミス等を回避するためには、VN及びサービス機能チェインの構築制御の自動化が必須である。また、IoTアプリケーションの急速な普及に伴い、データ生成機器やサービス品質(QoS)要求が今後ますます多様化するため、時々刻々と変動する通信トラヒック及び様々なQoS要求の双方を認知して、動的かつ自動でVNを再構成する仕組みが必要である。その際、InPは、各vNFに対して割り当てられた計算機資源(例:CPU)の量を適時適切かつ迅速に動的増減することで、SFC基盤上でトラヒックを効率的に処理することができる。データセンタエッジネットワークコアネットワークInPVNO物理ネットワーク物理資源提供…VN-1VN-2VN-XVNs物理資源要求VN構築要求…アプリケーションサービス提供者サービス品質レベル収集情報(a) VN構築VN物理ネットワークサービス機能チェインサービス機能パスFirewallNATCodingCaches(b) VNエンベッディングとSFC 図1 VN及びサービス機能チェインの構築86 情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)6 ネットワークの効率的な資源配分を目指す研究開発
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