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ことによって、10ミリ秒未満のレイテンシを維持できることが分かる。3.2Horizontal Scaling本節では、VN基盤において、トラヒック変動時に、サービスを提供する仮想マシンの数を動的に調整する自律資源調整機構(ARCA:Autonomic Resource Control Architecture)について説明する [21]–[24]。我々が研究開発を行っているARCAでは、資源利用や障害等の情報だけでなく、ネットワーク外部のイベント等の発生を外部イベント検出器によって検知し、その結果も利用して、サービスを提供するのに必要な仮想マシン数を推定し、自律的な計算機資源制御を行う。同時に、閾値ベースの制御アルゴリズムも有しており、トラヒック負荷の計測結果を分析した結果に基づく動的資源調整を、予測ベースの制御調整に優先して行う。3.2.1ARCAのフレームワーク図4に、ARCAのコンポーネントとワークフローを示す。ARCAの制御システムは、収集、分析、決定、実行の4つの機能を含む。収集機能では、VN基盤及び外部イベント検出器から得られる監視データを集める。分析機能では、複数の監視データ間を相互に比較し、VN基盤のトラヒック負荷状況や、非日常ケース(例:各種イベントや障害)の発生を認知する。決定機能では、現在のトラヒック負荷または今後の負荷変動予測を基に、計算機資源調整の内容を決定する。実行機能では、決定された制御内容に従って、VN基盤を制御する。3.2.2各サービス用に必要な仮想マシン数の推定決定機能においては、資源制御に要する時間に起因する遅延発生をなるべく最小化する必要があり、機械学習等を活用して、事前に必要な計算機資源量を推定する仕組みが有効である。収集機能では、例えばカルマンフィルタ等を適用して、無関係なデータを分析対象外とした上で、重要なデータを、分析機能に送る。分析機能では、イベント間の相関、VN基盤の現在及び今後の予測状況を認知し、決定機能に通知する。決定機能では、例えば機械学習の1技法であるサポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)等を適用し、今後必要となる仮想マシン数を推定する [25]。完全な予測は不可能なことから、トラヒック負荷の測定結果を基に閾値ベースでリアクティブに制御する機構も用いて、計算機資源量の再調整を行う。必要な仮想マシン数の推定においては、資源利用効率等を考慮して必要最小限の数を推定するが、前述の非日常ケースの発生等も考慮し、状況に応じて推定ポリシを適応的に変更可能とする。実行機能では、VN基盤の仮想環境を直接的に構築制御するシステムに対して、仮想マシン数の調整を要求する。3.2.3評価機械学習ライブラリであるSciKit-Learn (http://scikit-learn.org)のSVR機能を使って、必要な仮想マ(a) 検索レイテンシ及びトラヒック負荷(b) CPU割当率及びCPU利用率図3 検索レイテンシ平均値、トラヒック負荷、CPU割当率及びCPU利用率VN基盤制御システム収集機能分析機能決定機能実行機能コントローラVN基盤管理者分析結果決定結果制御要求外部イベント検出器監視データ図4 ARCAのコンポーネントとワークフロー88   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)6 ネットワークの効率的な資源配分を目指す研究開発

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