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調停の例を示す。各ネットワークノードでは、どのVNも使っていない(未使用の)CPU資源はないものとする。ネットワークノード1では、VN 1のCPU使用量が大きくCPU資源増加が必要で、VN 4のCPU使用量が小さく資源譲与可能と想定する。VN 1はCPU資源量αだけ増やす必要があり、VN 4では譲与可能なCPU資源量がα以上の場合、VN 4のCPU資源量をαだけ減らすことによって、VN 1のCPU資源量をα増やす。もしVN 4の譲与可能資源量がα未満だった場合は、他のVNsの譲与可能資源も探索し、CPU資源が余っていたら、他VNsからも譲与される。ネットワークノード2では、VN 2のCPU使用量が大きくCPU資源増加が必要で、VN 3のCPU使用量が小さく資源譲与可能と想定する。ネットワークノード1のケースと同様、VN 2はCPU資源量βだけ増やす必要があり、VN 3では譲与可能なCPU資源量がβ以上の場合、VN 3のCPU資源量をβだけ減らすことによって、VN 2のCPU資源量をβ増やす。CPU資源量の調整は、各VNのQoS要求レベルに依存する。前述のCPU割当量axyに関して、時間tにおける割当量をaxy(t)と表す。一方で、時間tにおけるCPU使用量をuxy(t)と表す。時間tにおけるVN xのネットワークノードyでの資源利用状況は、下記のとおりである。••Saturation: uxy(t) = axy(t)••Ideal: (uxy(t)+ m(q))= axy(t)••High: (uxy(t)+ m(q))> axy(t)and uxy(t) < axy(t)••Low:(uxy(t)+ m(q))< axy(t)ここで、m(q)はQoS要求レベルqのVNsに対するマージン値である。我々の提案方式では、QoS要求レベルが高いVNのCPU飽和発生をなるべく回避するために、QoS要求レベルが高いほどm(q)の値を高く設定するといった傾斜配分を行う[10][11]。なお、m(q)の値は、当該VNにおいては、どのノードにおいても同じ値である。各VN及び各ネットワークノードにおいて、上記を基に、資源利用状況の判定がなされる。判定の結果、「High」の場合、そのVNにおいては、(uxy(t) – axy(t) + m(q))だけCPU資源量を増加する必要がある。「Low」の場合、そのVNは、(axy(t) – uxy(t) – m(q))だけ、他の資源逼迫中のVNsにCPU資源を譲与可能である。前述のとおり、QoS要求レベルが高いほど優先的にサービス品質を維持すべくCPU資源量が増加されるが、一方で、他のVNsで譲与可能なCPU資源が複数ある場合に、どのVNのCPU資源を減らすかという課題がある。QoS要求レベルが低いVNsから優先的に減らすが、同じQoSレベルのVNsの中でどのCPU資源を減らすかについては、最も簡易な方法は、ランダムに資源譲与するVNを決定する手法(ランダム選択法)である。しかしながら、ランダム選択法では、譲与可能なCPU資源量が小さい複数のVNsから譲与する可能性があり、CPU資源量増減の調整回数が増えてしまう問題がある。そこで、我々の提案方式では、同じQoSレベルのVNsの中では、譲与可能資源量の最も大きいVNからCPU資源を減らす手法(決定的選択法)を用いる [10][11]。3.3.2各VNにおける複数ネットワークノード間の動的機能移行 3.3.1で説明したネットワークノード内のVNs間資源調停を実行してもなお、CPU飽和状態のVNが存在する場合、当該VNにおいて、ネットワークノード間でNFの移行(マイグレーション)を行う。ただし、我々の提案方式では、前述のとおり、まずはデータプレーン上の経路(データを転送するリンクと物理スイッチ)を変更することなく、機能マイグレーションする。また、どの移行先候補ノードにおいても十分な計算機資源が無い場合は、NF移行は行わない。図7に、NF移行の例を示す。この例では、ネットワークノード1において、VN 1がCPU飽和状態である。ネットワークノード2に十分な計算機資源があることから、VN 1のNFがネットワークノード2に移行され、その分、VN 1の計算機資源量を増加する。NF移行においては、まず初めに、移行先ノードにおいて当該VNのために必要な計算機資源が確保された上で、コントローラからNFオフローディングの要求が送られ、NFが起動する。次に、移行元ノードにおいてコントローラからの要求に従ってNFが停止し、仮想マシンの計算機資源が解放される。3.3.3評価図8は、1ノード内のCPU飽和発生回数について、固定資源割当(Static)、各ノード内の資源調停のみ実Node 1Node 2Node 3Node 4VN番号CPU割当量1a'11a11+ α2a213a314a'41a41–αVN番号CPU割当量1a122a'22a22+ β3a'32a32–β4a42図6 各ネットワークノードにおけるVNs間の資源調停のイメージ90   情報通信研究機構研究報告 Vol. 64 No. 2 (2018)6 ネットワークの効率的な資源配分を目指す研究開発

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