HTML5 Webook
97/116
まえがきこれまでインターネットはメールやファイル転送のような一対一の情報伝達を実現するための通信基盤として発展してきた。しかし近年、SNSをはじめとするコミュニティー通信や、多数のユーザーが同時に視聴する超高精細なビデオ配信のための通信、IoTと呼ばれるモノとモノ(あるいはモノとヒト)がつながる通信が通信量の大半を占めている。また近い将来に向け、ネットワーク上に流通する大量のデータから必要なデータを抜き出し、人工知能(AI)や機械学習機能を用いて情報解析し、最適な情報を人間やロボット、センサーなどへ提供可能にする通信技術の研究なども進められており、インターネットサービスは更なる進化が予想される。このように、人々が求めるアプリケーションやサービス、環境は常に変化し、データ量やネットワーク接続されるデバイス数も今後益々爆発的に増加するであろう通信環境において、クラウドやContent Distribution Network(CDN)などの既存技術を拡張していくだけでは多様かつ新しい要求に対応できない。このため、従来のInternet Protocol(IP)通信よりも高速で効果的、効率的、スケーラブルで省エネルギーな通信、そしてセキュアでプライバシーも考慮した安全な通信を実現する、新しい通信プロトコル、新しいネットワークアーキテクチャの提案が欠かせない。情報指向ネットワーク技術将来的なインターネット通信サービスが直面する諸問題を解決するための新たなネットワークアーキテクチャとして「情報指向ネットワーク技術(Information-Centric Networking(ICN)あるいはContent-Centric Networking(CCN))」が注目されている。この通信技術の原点になったものは、「本来、通信サービスが求めるものはサーバーへのアクセスではなく、『情報』の取得にほかならない」という考えである。つまり、「もし近くに自分が欲しいコンテンツを持っている人(実際はネットワーク機器やPCなど)がいるならば、そこからコンテンツを取得すればよい」という発想であるICN/CCNでは、情報を取得するために必ずサーバーの位置(IPアドレス)を調べてそのサーバーにアクセスしなければならないというこれまでの通信プロトコルの制約を排除し、「情報(若しくはコンテンツ)」そのものを示す識別子(コンテンツ名など)を利用し、それを指定してネットワークから情報(コンテンツ)を取得することを可能とする。12より高度化する通信サービスを効率的に実現するため、NICTでは「情報指向ネットワーク技術(Information-Centric Networking(ICN)あるいはContent-Centric Networking(CCN))」と呼ばれる新しいネットワークアーキテクチャの研究開発を行っている。具体的には、ICN/CCN実現のために必要となる「ネットワーク内キャッシュ」「経路制御」「トランスポート」「セキュリティ」などの基礎研究に加え、Ceforeと呼ぶ通信オープンソース・ソフトウェア・プラットフォームの開発を行っている。本稿では、特に「リアルタイムストリーミング用トランスポート技術」及び「Cefore実装」に関して説明する。We have been working on a new network architecture called “Information-Centric Networking (ICN)” or “Content-Centric Networking (CCN)”. ICN/CCN effectively facilitates future advanced communication services. As the fundamental research, we have been studying in-network cach-ing, routing, transport, and security for ICN/CCN. We also have been developing an open software platform named “Cefore”. In this paper, we describe a newly developed transport mechanism for real-time streaming over ICN/CCN and the Cefore implementation.6-2 情報指向型ネットワーク技術6-2Information-/ Content-Centric Networking朝枝 仁 松園和久 大岡 睦Hitoshi ASAEDA, Kazuhisa MATSUZONO, and Atsushi OOKA936 ネットワークの効率的な資源配分を目指す研究開発
元のページ
../index.html#97