アスによる変化は約 24 MHz/mAである。この特性を使ってTHz-QCLの位相ロックを行うことができる。(5.1参照)THz-QCLは、現在、世界的にも様々な開発が行われている新しい技術である。今後取り組むべき課題としては、前述した高温動作(液体窒素温度(77 K)あるいはペルチェ冷却)、高出力、広域に渡って電気的に周波数可変であることのほか、広い帯域での発振(1~7 THz)、良好なビームパターン、高い周波数の絶対精度(数GHz程度)、位相ロックとその長期安定、機械振動のデバイスへの影響の低減、戻り光を少なくすること等が挙げられる。ビームパターンはLO信号のミキサへのカップリングの向上という意味において、ヘテロダイン受信機への応用では高出力化と同等に重要である。テラヘルツ波ヘテロダイン受信機システムTHz-QCLをLOとしたHEBMによるヘテロダイン受信機を構成した。図14に受信機システムの写真を示す。ビームスプリッタには反射率が5~10%の誘電体フィルム(例えば厚み4~6 μmのポリエチレン)等が用いられる。冷凍機の真空窓には1 mm厚の高密度ポリエチレン(HDPE:High Density Polyethylene)が使われている。THz-TDSによって測定された2~3 THzにおける透過率は約80~90%である。図15に、テラヘルツ波が入射したときのHEBMの電圧-電流特性の変化を示す。3.2でも述べたように、テラヘルツ波の入射に伴い、超伝導状態から超伝導と常伝導の混在状態を経て、常伝導状態になる様子が見られる。このことはHEBMデバイスがテラヘルツ波を検出(ボロメータとしての応答)していることを示している。ミキサとして最適(最も低雑音)なLOパワー注入量は図15において電流-電圧特性がほぼ直線に近いが若干非線形の残った(緑の線)程度で、バイアスは約 0.5 mVの固定バイアスで使用する[21]。ミキサの性能評価として、受信機雑音温度やIF帯域の測定がある。受信機雑音温度として、3 THz帯HEBM受信機で約 1,200 K(DSB)、2 THz帯で約 810 K(DSB)が得られている。ヘテロダイン検出器の雑音温度は、位相と振幅を同時に決められないという不確4図12 (a)クライオスタット内に取り付けられたTHz-QCL (b)冷凍能力11 W/77 Kの機械式スターリング冷凍機(a)(b)図13(a)3.1 THzで発振するTHz-QCLの動作温度25 K における電流-電圧特性と電流-出力特性。出力はCW発振で約100μW (b)発振周波数のバイアス電流特性(約24 MHz/mA)(a)(b)994-4 テラヘルツ波高感度ヘテロダイン受信機の開発
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