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りの-80℃として、従来の44mmのレーザロッドを用いたレーザモジュールとの比較を行った。図4に実験に用いたTm,Ho:YLF リングレーザ共振器の構成を示す。光共振器は、3枚の全反射鏡及び出力鏡(反射率: R=61%)により構成し、単一方向発振を行うために、出力鏡の外側に逆方向発振のレーザ光を反射させる全反射鏡を設置した。共振器内には、熱レンズ効果の焦点距離1.5 mの補償用レンズ及びAcoustic-optics (AO) Qスイッチを挿入した。図5に実験結果を示す。励起エネルギー1.45 J のときに、繰り返し周波数 70 Hzで出力エネルギー104 mJ が得られた。これは、平均出力 7.28 W に相当し、これまでに報告されている 100mJ 級の伝導冷却型 2µmレーザとしては最高出力となる [13]。また、このときのビーム品質は、ナイフエッジ法によるビーム径測定の結果、M2≦1.5 であることが確かめられた。50 Hz での動作では、励起エネルギーが1.8 Jのとき、パルスエネルギーは 125 mJ に達した。強励起時には、スロープ効率の低下が見られたが、これは GSD の影響であると考えられる。長さ44 mm のレーザロッドを用いた従来モジュールの結果と比較すると、大幅な低閾値化が達成されたことがわかる。3.2Tm,Ho:YLF MOPA開発-40℃付近までレーザ動作温度を上げる場合、従来と同様のレーザ発振器単体構成で100 mJ級のパルスエネルギーを実現することは、開発した高密度励起レーザモジュールを用いたとしても、レーザロッドからの排熱やレーザ共振器へのダメージなどの観点から非常に困難である。高温動作と高出力動作を両立させるために、レーザ発振器と増幅器を組み合わせたTm,Ho:YLF MOPAレーザの研究開発を行った。図6に、開発を行っている改良型の小型リング共振器とXダブルパス型の増幅器から構成されるTm,Ho:YLF MOPAの光学系を示す。発振器と増幅器用の高密度励起レーザモジュールは、同じ真空容器の中に収められている。共振器は、単一波長発振による空間的ホールバーニングの抑制と100 ns以上の長いパルス幅を実現するために、共振器長3.86 mのリング共振器を採用している。従来の共振器は、3枚の全反射鏡及び出力鏡により構成されていたが、取り扱いやすさ及び安定性の向上の観点から小型共振器への改良を実施した。長方形のリング共振器をベースとして、プリズムと全反射鏡のペアを用いた折返し機構を二か所に用いることで、従来の3.86 mの共振器長を保持したまま小型化を行った。プリズム正面の全反射鏡には曲率を持たせており、これによりYLF結晶の熱レンズ効果を補償している。出力鏡の反射率は、レーザ発振の閾値及びスロープ効率、共振器内の素子へのダメージ閾値の観点から最適化を行い75%とした。インジェクションシーディングによる発振波長制御並びに単一方向発振を行うために、リング共振器の双方向発振光軸の片側からシード光を注入した。共振器長は、共振器内に配置されたピエゾ駆動ミラーを走図4 Tm,Ho:YLFリングレーザ発振器の実験系出力鏡R=61%発振器用Tm,Ho:YLFレーザモジュールHR: 2µm帯高反射ミラーM1: HRM2: HR真空容器レーザ出力M3: HRAOQ-swf=1.5mM4: HR図5 高密度励起型Tm,Ho:YLFレーザモジュールの発振特性025507510012515000.511.52パルスエネルギー(mJ)励起エネルギー(J)高密度励起レーザモジュール: 50Hz高密度励起レーザモジュール: 70Hz従来のレーザモジュール: 30Hzレーザ媒質温度: -80度図6 Tm,Ho:YLF MOPAの光学系IsolatorSeedingFiber port(CW seed laser, 2051.250 nm)出力鏡R=75%AOQ-sw発振器用Tm,Ho:YLFレーザモジュールHRM5: CurvedHRM3: HR (PZT)HR: 2µm帯高反射ミラーM1: HRPr2: HRPr1: HRM2: CurvedHRM4: HRHRHRHRHR真空容器Pr4: HR増幅器用Tm,Ho:YLFレーザモジュールPr3: HRレーザ出力120   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)4 衛星センサによる宇宙からの地球環境観測

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