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まえがき送信装置を必要としないパッシブレーダーは、装置が簡単になること、無線局免許が不要であることから無人運用、多地点観測に適している。放送波は電力が大きいことからパッシブレーダーとして多くの研究が行われてきた。しかしながら測位衛星(GNSS) の信号は、地上での電力密度が0.1pW/m2程度と微弱であることから、これまでは鏡面反射点からの反射のみを対象としたGNSS-Rと呼ばれる手法が用いられてきた[1] [2]。任意の方向に散乱したGNSSの信号を検出するためには、ゲインアンテナと長時間の積分を必要とする。今回、有効径75cmのパラボラの焦点に GNSS用のアンテナを装着して、GPS L5信号の散乱波を受信し、40秒間にわたりコヒーレントに積分することにより、特徴的なドップラー周波数変位をもつ散乱波を検出したので報告する。直達波に対する散乱波の遅延時間と散乱点–受信点間距離      受信点から衛星へのベクトルを⃗、受信点から散乱点へのベクトルを⃗、受信点から見た衛星の仰角をEl、受信点から見た衛星と散乱点の方位角差をΔAzとする。以下の議論では、散乱点は受信点を含む水平線面内にあるものとする。すなわち、散乱点と受信点は同一高度の地表面にあり、かつ⃗が地球半径に比べて十分に小さいとする。⃗と⃗のはさむ角θは、cos=cos cosΔ(1)と表されるので、バイスタティックレーダーの距離換算の式[3]から、直達波に対する散乱波の遅延時間τから求まる見かけの距離r(r=cτ、cは光速)を使って、散乱点–受信点間距離⃗は、⃗=12r2+r⃗⃗+r−⃗coscos(2)と表せる[4]。⃗≫rなので、 ⃗≒r1−coscos(3)となる[4]。衛星の移動に伴うドップラー周波数変位散乱点から衛星へのベクトルを⃗ 、光速をcとすると、直達波に対する散乱波の遅延時間の変化率は、=1cd{(S´⃗+⃗)-⃗} =1cdS´⃗-1cdS⃗ (4)で表せる[4]。ここで地上に固定された座標系での衛星の速度を⃗とすると、 =1cS´⃗S´⃗∙⃗−1c⃗S⃗∙⃗(5)となる。ドップラー周波数変位Δf はこの遅延変化率123GPS 信号の散乱波を用いるパッシブレーダーについて報告する。散乱波は極めて信号強度が弱いため、ビームアンテナを用い長時間積分を行うことによって、特徴的なドップラー周波数変位を伴う散乱波の検出を行った。We report on passive radar using scattered signal of GPS. Since the scattered signal is ex-tremely weak in signal intensity, we adopted a beam antenna and long integration time and we could get the scattered signal with characteristic Doppler frequency shift. 4-7 GPS パッシブレーダーによる散乱波の検出 4-7Detection of Scattered Signal using GPS Passive Radar 新垣吉也 雨谷 純Yoshiya ARAKAKI and Jun AMAGAI1234 衛星センサによる宇宙からの地球環境観測

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