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 =PAPN2BT (10)となる。受信機のNFを3dB(受信信号以外の雑音は受信機のシステム雑音が支配的であるとする)、受信帯域幅を 20 MHz、積分時間を40秒とすると、所望受信電力 は、>5.2×10−23×2[] (11)と見積もられる。GPS信号の地表面での電力密度 を0.1/m2、散乱源の面積をA、単位面積あたりの散乱断面積をσ、散乱源と受信点の間の距離Rを3km、受信アンテナの開口径Dを75cmとすると、=22142>5.2×1023×2[W] (12) (12)Aσ>0.13×2[m2](13)となるから、距離分解能を15m、方位分解能を0.5 度(3kmの地点で26mの距離分解能)とすると、σ>3.3×10−4×2(14)と見積もられる。 観測システム観測に用いたシステムのブロック図を図4に、使用したアンテナ及び観測対象とした恩納岳の写真を図5 左に示す[4]。散乱波受信系に使用するアンテナには、市販の有効径57cmのBSアンテナの給電部を取り外し、代わりに通常のGNSS用アンテナを装着したものを用いた(図5下)。このアンテナのゲインは約17 dB、ビーム半値幅は約20度と見積もられる。局内遅延の補正と、GPSの重畳信号による位相反転を検出するため、通常のGNSSアンテナを基準受信系として用いた。現在、種々のGNSS信号が利用できるが、帯域幅の広さと送信している衛星数の多さから、GPS のL5信号[5](中心周波数1176.45MHz、チップレート10.23MHz)を採用した。2 つのアンテナの信号は、中心周波数80MHzに周波数変換した後、帯域幅32 MHzのバンドパスフィルタで帯域制限し、64Msps、量子化ビット数8ビットでアンダーサンプリングした。サンプリングにはVLBI用に開発されたADコンバータを使用した。サンプリングしたデータはPCに転送し解析を行った。PC内での解析(図6)では、yuma アマルナック[6]を用い、周波数の1次変化分まで、遅延の2次変化分までの予測値を計算し、それらを補正しつつレプリカ相関を行った。まず、基準受信系のレプリカ相関により局内遅延を推定した後、その値を用いて散乱波受信系のレプリカ相関を行った。相互相関はいわゆるFX法を用いて、GPS L5信号のコード長である1ミリ秒ごとに行った。 L5信号にはデータが重畳されているため、位相が不定期に反転する。そのため、基準信号系の位相反転5図4 受信システム図5(上)アンテナと観測対象の恩納岳、(下)パラボラアンテナの焦点に取り付けられたGNSS アンテナ図6 PC 内での信号処理 126   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)4 衛星センサによる宇宙からの地球環境観測

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