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して補正した後、再度、今度は40秒分のデータについて2次元フーリエ変換を行い、レンジ・ドップラーマップを作成した。観測結果沖縄電磁波技術センターの庁舎屋上に設置した散乱波受信用アンテナ(北緯26度29分55秒、東経127 度50分41秒、標高19m)を南東方向に3.7kmほど離れた山(恩納岳 北緯26度28分44秒、東経127度 52分29秒、標高363m)に向け、データを取得した。取得したデータを解析して得られたレンジ・ドップラーマップの例を、計算値及び地図上への投影図とともに図7に示す[4]。3に示したように、レンジ・ドップラーマップ上の散乱波が予想される部分の面積が大きいほど、分解能が高く、SN比が低下することが予想されるが、観測値及び地図上の投影結果にそれを見ることができる。地図上で、衛星により散乱源の場所が異なるように見えるが、観測時、SV#26は南西方向(Az=252.8°, El=55.8°)にあり後方散乱に近く、SV#32 は南東方向(Az=135.7°, El=67.0°)にあり前方散乱に近いことから、散乱源へのGPS信号の照射方向の違いによるものと考えられる。本方式のGNSS-Rに対する利点は、GPSの電波が散乱源に対し照射されることであり、これを利用すれば散乱源の散乱断面積の異方性を計測できる可能性がある。まとめ有効径75cm のパラボラアンテナを用い、40秒間コヒーレントに積分することにより、GPS L5信号の山の斜面からの散乱波を検出した。観測時間中に衛星が移動することから、合成開口レーダーのように、方位角分解能が実開口のそれと比べ改善されることが確認された。また、衛星により散乱源に対し電波が照射される角度が変化するため、散乱源の分布が異なることも確認された。今後、データを蓄積し、散乱源の状態やその変化の抽出を行っていきたい。謝辞 開発したサンプラー制御ソフトを使わせていただいた、NICT の VLBI 開発グループの方々、時空標準研究室 後藤忠広主任研究員に感謝いたします。【参考文献【1M. Martin-Neira, “A Passive reflectometry and interferometry system (PARIS): Application to ocean altimetry,” ESA J., 17:331-355, 1993.2T. Hobiger, J. Amagai, M. Aida, and H. Narita, “A real-time GNSS-R system based on software-defind radio and graphics processing units,” Adv. Space Res., vol.49, no.7, pp.1180–1190, 2012.3M. I. Skolnic, “Introduction to Radar system,” McGraw-hill, 1962.4Y. Arakaki, J. Amagai, “Detection of GPS signal scattered from moun-tain,” IEICE Communications Express, Vol.7, No.4, pp115-119, 1 April. 2018.5IS-GPS-705, Navstar GPS space segment/User Segment L5 Interfaces, 24 Sept. 2013.6https://www.navcen.uscg.gov/?pageName=gpsAlmanacs新垣吉也 (あらかき よしや)電磁波研究所時空標準研究室主任研究員 リモートセンシング雨谷 純 (あまがい じゅん)イノベーション推進部門受託研究推進室 リモートセンシング、時刻周波数比較、電波干渉計67128   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)4 衛星センサによる宇宙からの地球環境観測

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