なっている。このQL画像はできる限り遅延が最小となるように、図1に示すように各レーダーサイトにQL作成サーバを設置して(吹田はデータ中継サーバでQL作成)、そこでファイル容量の小さなQL画像を作成し、直ちに小金井に転送している。こうすることで、ネットワーク遅延などで観測データがリアルタイム転送できない場合でも、QL画像でレーダー運用状況を確認できる可能性が大きくなる。図2は公開Webページで表示される画面の例で、中央の白地図にレーダー反射強度を重ねているQL画像がトップページのリアルタイム表示に使われている。右側の地図上に反射強度を重ねた画面はGoogle Mapsを利用しているが、リアルタイム表示に用いているQL画像と同じファイル(透過png)を利用している。降雨サマリーのグラフは1日(24時間)の30秒ごとの平均降雨量(赤の棒グラフ)、最大降雨量(緑の棒グラフ、0.01倍)、降雨面積(青の折れ線)を示す。当日の降雨サマリーは1時間ごとに更新しているので、レーダー観測範囲内の大まかな降雨状況が一目で分かるようになっている。過去データの検索は、図2(左)のカレンダーの日付あるいは月を指定することで、当該日のQL画像及び降雨サマリーにジャンプしたり1か月(4週分)の降雨サマリー画面にジャンプしたりすることができ、容易に降雨状況を把握することができる。Webページの降雨サマリーグラフは所望の時間あるいは日をクリックすることで、該当のQL画像にジャンプする機能も併せ持っている。また、ここでは図示しないが、「雨と風の情報」というタグに切り替えると高度2kmの反射強度とドップラー速度分布のQL画像が表示され、レーダー上空の東西鉛直断面における反射強度とドップラー速度分布も表示される。リアルタイムのデータ品質管理PAWRの観測データには様々な原因のノイズや降雨以外の不要エコー(クラッタエコー)が含まれる。降雨分布を示す程度であれば普通はそれほど大きな影響はないが、定量的な降雨量を算出したりゲリラ豪雨予測をしたりしようとすると、それらのノイズデータが大きな問題となる。従来のパラボラアンテナ型レーダーでも同様のクラッタエコーなどの問題はあるが、PAWRはアンテナパターンを合成して形成するために[2]、地表面クラッタエコーが混入しやすいという弱点がある。また、送信モジュールの高集積化の影響でレンジサイドローブによる疑似エコーが生じやすいなどデータ品質に多くの問題を抱えている。2013年に科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究課題「「ビッグデータ同化」の技術革新の創出によるゲリラ豪雨予測の実証(研究代表者:三好建正)」が採択され、100m分解能、30秒ごとのPAWR観測によるビッグデータを、京コンピュータを用いて同化して30分先までの予測を行うという研究開発が始まった[3]。CREST研究で実施した最初のビッグデータ同化実験では[4]、PAWRのデータ品質管理はRuiz et al.(2015)の手法を用いていた[5]。この品質管理は実験に用いる観測事例でチューニングを行い、不要データを完全に除いたもので、30秒観測のデータを品質管理するために40秒の計算時3図2PAWRリアルタイム観測データの公開Webページ(https://pawr.nict.go.jp)から過去のデータの選択カレンダー(左)、最新の降雨分布(中)、Google Maps表示(右上)、降雨サマリー(右下)。 いずれも英語ページの例を示す。RtrFv TrchFvd pTst dTtTRTb tFm dFspbTyGooib mTpsdFspbTyRTFnfTbb SummTry112-2 フェーズドアレイ気象レーダーのリアルタイム観測データの利用
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