するためにhpcopyツールを用いて常時リアルタイム転送を実現し、リアルタイム観測データ利用ユーザに配信するとともにデータアーカイブを行っている。Webページでは30秒ごとの観測データから高度2km水平断面の降雨分布を観測終了後1分以内に公開しているほか、過去データを効率よく検索することができる。PAWR観測データには地表面クラッタやレンジサイドローブなどの不要エコーが含まれており、それを除去するためのデータ品質管理が重要である。ビッグデータ同化実験や3次元降水ナウキャストで用いるため10秒以内で処理できる高速データ品質管理手法を開発し、定常的なリアルタイム運用を行っている。PAWR観測データのリアルタイム利用として、理研で運用されている3次元降水ナウキャストとスマホアプリ「3D雨雲ウォッチ」を紹介した。観測ビッグデータをリアルタイムで利用することは容易ではないが、ネットワークや計算機の発展に伴い大抵のことが実現できるようになってきた。2~30年前の気象レーダーではPAWRの100分の1のデータ量を保存することがまず大仕事であり、数年前の過去データをネットワークからすぐ利用できるというのは夢物語であった。現在はペタバイトクラスのストレージも価格が大幅に下がり手軽に使えるようになった。最近ではAI技術の応用でビッグデータを用いる機会も増えてきたが、本データ利用システムは十分にそれを可能としている。今後は、埼玉大学に設置された新しいMP-PAWRの観測データがPANDAデータ利用システムに加わる予定であり、リアルタイム観測データの利用も増えていくと考えられる。システムやネットワークの安定運用に加えてデータQCは大きな問題であり、AI技術の応用も含めて更なるQCの精度向上が必要と考えている。謝辞PANDAデータ利用システムの開発及び保守運用は株式会社セックにお世話になっており、同社の村永和哉氏の長年の貢献に対して深く感謝の意を表したい。リアルタイムのPAWRデータ品質管理は、CRESTの研究課題の研究成果であり、研究代表者である理化学研究所の三好建正氏には大変お世話になった。また、理研天気予報のPAWRリアルタイム観測データ利用は、理化学研究所の大塚成徳氏及び石川裕氏の尽力によるものである。スマホアプリ「3D雨雲ウォッチ」の開発に関しては、株式会社エムティーアイの小池佳奈氏に心から感謝する。本文中にも記したとおり、本研究はJST CREST研究課題「「ビッグデータ同化」の技術革新の創出によるゲリラ豪雨予測の実証」及びエムティーアイとの共同研究「フェーズドアレイ気象レーダーによる豪雨予報に関するモバイルコンテンツ開発」の研究成果によるところが大きい。【参考文献【1佐藤晋介, 牛尾知雄, 水谷文彦,“フェーズドアレイ気象レーダの研究開発,” NICT News 2013年1月号 no.424, pp.3–5, 2013.2F. Mizutani, T. Ushio, E. Yoshikawa, S. Shimamura, H. Kikuchi, M. Wada, S. Satoh, and T. Iguchi, “Fast-scanning phased-array weather radar with angular imaging technique,” IEEE Trans. Geosci. Remote Sens., 56, pp.2664–2673, 2018. doi: 10.1109/TGRS.2017.2780847.3T. Miyoshi, G.-Y. Lien, S. Satoh, T. Ushio, K. Bessho, H. Tomita, S. Nishizawa, R. Yoshida, S. A. Adachi, J. Liao, B. Gerofi, Y. Ishikawa, M. Kunii, J. J. Ruiz, Y. Maejima, S. Otsuka, M. Otsuka, K. Okamoto, and H. Seko, ““Big Data Assimilation” toward post-peta-scale severe weather prediction: An overview and progress,” Proc. of IEEE, vol.104, pp.1–25, 2016. doi: 10.1109/JPROC.2016.2602560.4T. Miyoshi, M. Kunii, J. J. Ruiz, G.-Y. Lien, S. Satoh, T. Ushio, K. Bessho, H. Seko, H. Tomita, and Y. Ishikawa, ““Big Data Assimilation” revolution-izing severe weather prediction,” Bull. Amer. Meteor. Soc., vol.97, pp.1347–1354, 2016. doi: 10.1175/BAMSD-15-00144.1.5J. J. Ruiz, T. Miyoshi, S. Satoh, and T. Ushio, “A quality control algorithm for the osaka Phased Array Weather Radar,” SOLA, 11, pp.48–52, 2015. doi:10.2151/sola.2015-011.6S. Otsuka, G. Tuerhong, R. Kikuchi, Y. Kitano, Y. Taniguchi, J. J. Ruiz, S. Satoh, T. Ushio, and T. Miyoshi, “Precipitation nowcasting with three-dimensional space-time extrapolation of dense and frequent phased array weather radar observations,” Wea. Forecasting, 31, pp.329–340, 2016. doi: 10.1175/WAF-D-15-0063.1.7F. Isoda, S. Satoh, and T. Ushio, “Temporal and spatial characteristics of localized rainfall on 26 July 2012 observed by phased array weath-er radar,” SOLA, 2018, 14, pp.64–67, 2018. doi:10.2151/sola.2018-011.8磯田総子,佐藤晋介,花土弘,高橋暢宏,水谷文彦,牛尾知雄,“フェーズドアレイ気象レーダによる豪雨の3次元観測,”可視化情報学会誌, vol.34, no.135, pp.148–153, 2014.9小池佳奈,ほか10名,“フェーズドアレイ気象レーダーの3次元データ配信スマホアプリによる実証実験,”気象学会2015年度秋季大会予稿集,B355,2015.佐藤晋介 (さとう しんすけ)電磁波研究所リモートセンシング研究室研究マネージャ―博士(理学)レーダー気象学花土 弘 (はなど ひろし)電磁波研究所リモートセンシング研究室研究マネージャ―理学修士マイクロ波リモートセンシング14 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)2 地上レーダーによる気象現象の観測
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