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周波数帯域を有しており、帯域中に5,617本のキャリアが存在している。各キャリアは長さ1.134 msの“シンボル”を基本単位として64QAMのフルセグ映像・音声信号やQPSKのワンセグ信号などの情報伝達を担っている。このシンボルには時間・周波数方向に周期的にBPSKのパイロット信号(SP信号)が埋め込まれており、このSP信号だけを抜き出すことで遅延プロファイルが導出される。遅延プロファイルを用いることで、電波塔から測定点まで様々な伝搬経路(マルチパス)で伝搬する電波を遅延時間ごとに分離することができる。遅延プロファイル上で分離された各電波成分(直達波や反射波)の位相を測定し、その変化から伝搬遅延変動を算出する。4シンボルで1つの遅延プロファイルが算出できるため、原理的に約4.5 msごとに伝搬遅延計測が可能である。現在は1秒間の平均値として伝搬遅延をリアルタイム算出している。観測結果の例NICTで実施している観測の位置関係を図3に示す。東京スカイツリーから西方約29 kmに位置するR0が測定点であるNICT小金井本部で、R1~R3はそれぞれ遅延プロファイルからの遅延時間や反射波の到来方向から推定される反射体の位置である。R0において、直達波に加えて3つの反射波、合計4波の信号を受信することができている。これらの信号の位相差を算出することで、図3(b)に示す3つのエリアそれぞれの伝搬遅延を導出することができる。得られた各エリアの伝搬遅延変動の一例(2018年7月23・24日の測定例)を図4に示す。図4(a)では各エリアの伝搬遅延を1 kmあたりの遅延量に換算してプロットしている(見やすくするためにエリア2、エリア3のデータにはそれぞれ50ピコ秒、100ピコ秒のオフセットを加えている)。エリア1のライン(赤実線)に重ねている黒実線は、NICT本部(小金井)における一地点観測で得られた地上気温、気圧、湿度から理論的に算出した1 kmあたりの伝搬遅延である。一地点の地上気象観測値を1 kmの間一定と仮定して算出している。一地点観測から算出された計算値と1 kmの積算である地デジ観測値は観測エリアが異なるため必ずしも一致する必要はないのだが、それでも両者は比較的良い一致を示しており、4図2 ソフトウェア無線の技術で開発した観測装置携帯回線用アンテナGPSアンテナ携帯回線用ルータ多点展開用キャビネットUSRP-N210PC図3 NICTで実施している水蒸気量観測の位置関係R0R1R2R3d1 = 2.01 kmd2 = 8.28 kmd3 = 13.76 km(NICT)~2.8 km~3.1 km~1 km(b)R0R1R2R3東京スカイツリー29.08 km(a)図4地デジ放送波を用いた水蒸気量観測結果の一例(2018年7月23日~24日)(a)伝搬遅延/ km(b)湿度(c)水蒸気量エリア1エリア2(+ 50 ps)エリア3(+ 100 ps)地上気象1点観測から算出したエリア1の伝搬遅延地上気象1点観測から算出したエリア1の湿度エリア1の湿度エリア1の水蒸気量地上気象1点観測から算出したエリア1の水蒸気量3693691518211518213693691518211518211821時(JST)時(JST)時(JST)図5 首都圏における観測展開の現状5030402010気象研国立極地研究所獨協大埼玉大学(MP-PAWR)2030千葉工大東京都環境科学研究所東京スカイツリーNICTテレビ埼玉45604060日本アンテナ蕨工場板橋区役所すでに観測を開始試験観測・現地調査済(2019年3月現在)試験観測済東工大スカイタワー西東京(田無タワー)172-3 地上デジタル放送波を用いた水蒸気量推定手法の研究開発

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