は、地上デジタル放送波を用いた水蒸気量観測(地デジ水蒸気観測)、ドップラーライダー、雲レーダー、MP-PAWRで構成され、積乱雲等の降水システムの一生をシームレスに観測することが可能である(図3)。線状降水帯等の発達予測を可能とする、数時間先までの短時間予測技術の高度化としては、2つの開発項目がある。1つは最新水蒸気観測データを用いたデータ同化手法に基づく予測技術の開発である。こちらについては、NICTが開発整備した首都圏における地デジ水蒸気観測ネットワークを中心に開発を進め、数時間先までの発達予測の実現を目指す。もう1つは、NICTが所有するフェーズドアレイ気象レーダー(MP-PAWR及びPAWR)の観測データを利用した機械学習に基づく短時間予測技術の開発である。MP-PAWRは積乱雲の高精度3次元観測が可能であるが、首都圏以外に技術移転できない問題がある。そこで本研究では、MP-PAW及びPAWRの高空間分解能な観測データを教師データとし、現業気象レーダーで取得される従来データとの4次元関係(空間の3次元+時間の1次元を加えた4次元)を機械学習することで、従来型レーダーの4次元情報から線状降水帯等の積乱雲群の発達を低コストに予測する手法を開発する(図4)。2020年以降は首都圏に設置した観測測器の一部を九州に移設し、さらに新たに設置する水蒸気ライダー、地デジ水蒸気観測網を加えることで、首都圏と同様の観測体制を整備し、首都圏で高度化した予測システムを九州地方に適用する。この予測システムの情報を日本気象協会が開発するリアルタイム線状降水帯情報提供システムと連動させ、社会実験の中でその精度を検証する。SIP終了後には、開発した短時間予測技術の技術移転による、民間気象サービスの事業化を検討する。3.2発達予測技術の首都圏実証実験発達予測技術としては、NICTが開発した大阪と神戸に設置されているフェーズドアレイ気象レーダー(PAWR)を用いた渦管による局地的豪雨探知手法[4]を埼玉大学に設置・観測を行っているマルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダーに適用し、首都圏における線状降水帯等の積乱雲群の発達予測技術の実証実験を自治体や関係機関と協力し実施する。この実証実験において、数時間先までの予測技術の精度検証やSIP終了後の民間気象サービス事業化への隘路を把握する。また、内閣府のオリパラタスクフォース(正式名称:2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた科学技術・イノベーションの取組に関するタスクフォース事業)「プロジェクト6ゲリラ豪雨・図3 首都圏最新気象観測ネットワークの概念図降雨観測上空の大雨の素を捉えるマルチパラメ ータ ・フェ ーズド アレイ気象レーダーウインドプロファイラー地デジ水蒸気測定センサライダー雲レーダー水蒸気(見えない)上昇気流衛星搭載センサによる観測雨雲の発達10-20分程度雨のでき始め雲の形成24 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)2 地上レーダーによる気象現象の観測
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