まえがきウィンドプロファイラ（Wind Profiler Radar：WPR）は、晴天域における風速の高度プロファイルを測定する観測機器である。乱流等に起因する気温・水蒸気の局所的な変動は、大気の電波屈折率の擾乱を引き起こすことで、送信電波の散乱を発生させる。WPRは、送信電波の半分の波長のスケールを持つ屈折率擾乱による電波散乱（ブラッグ散乱）によるエコー（大気エコー）を受信する。大気エコーは背景風により移動するため、風速のアンテナビーム方向成分（視線速度）が大気エコーのドップラー速度となる。多くのWPRでは、複数のアンテナビームを使用し、異なる視線方向からのドップラー速度を得ることで、風速3成分（風速の鉛直方向・東西方向・南北方向の成分）を測定する。晴天域において風速を連続観測する手段は限られているため、WPRは、乱流、大気重力波、降雨システム等に関連する大気の力学過程の解明を目的とした学術研究のみならず、気象状況の把握や天気予報を行う気象業務にも利用されている[1]。気象庁では、全国33箇所に設置された1.3 GHz帯WPRの観測・処理システム（Wind profiler Network and Data Acquisition System：WINDAS）を運用している。WINDASで得られた観測データは気象庁本庁にある中央監視局に集められ、きめ細かな天気予報の基となる数値予報などに利用されている[2][3]。WPRの観測網は、欧州等でも運用されている[4]。局地的大雨（ゲリラ豪雨）や竜巻による気象災害は、社会に対する大きな脅威である。局地的に発生するこれらの極端気象を予測するためには、気象状態をより細かい時間・空間スケールで把握する必要がある[5]。気象状態をより細かい時間・空間スケールで把握する1ウィンドプロファイラ（Wind Profiler Radar：WPR）は、晴天域における風速の高度プロファイルを測定する観測機器である。国内外の気象業務機関が運用するWPRから得られる風速の観測データは、気象状況の把握や予報に利用されている。局地的大雨（ゲリラ豪雨）や竜巻による気象災害は、社会に対する大きな脅威である。そのため、気象状態をより細かい時間・空間スケールで把握し、さらに高精度で予測することは、防災・減災のみならず電力・交通などの社会インフラの運用にも貢献することが期待される。次世代WPRの開発は、小スケールの風速と乱流を十分に把握できる分解能と風速等の測定データ品質向上を達成することで、局地的かつ短時間で変化する気象状態の把握と予報の発展に寄与することを目指している。本報告では、次世代WPRの研究開発における目標、開発状況、及び今後の展開を述べる。Wind profiler radar (WPR) is an instrument that measures height profiles of wind velocity in the clear air. Wind products obtained by WPRs are used for weather monitoring and prediction. Weather disasters caused by localized heavy rain, tornadoes, and turbulence are large threats for human life and living. Therefore weather monitoring and prediction with enhanced time and spatial scales contribute not only to prevent and mitigate weather disasters but also to social infrastruc-ture operation. Development of next-generation WPR aims at achieving resolution sufficient for measuring small-scale wind variations and perturbations. Resolution enhancement attained by next-generation WPR is a promising means for grasping and predicting localized weather phe-nomena. In this report, the concept, current status, and future plans of the development of next-generation WPR are described.2-5 次世代ウィンドプロファイラの研究開発2-5Development of Next-Generation Wind Profiler Radar山本真之 川村誠治 西村耕司 今井克之 斎藤浩二 浜田隆行 山口博史 中北英一 山口弘誠Masayuki YAMAMOTO, Seiji KAWAMURA, Koji NISHIMURA, Katsuyuki IMAI, Koji SAITO, Takayuki HAMADA, Hiroshi YAMAGUCHI, Eiichi NAKAKITA, and Kosei YAMAGUCHI272 地上レーダーによる気象現象の観測
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