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ジによる位相変化を補正している。送信パルスの形状と受信時の周波数フィルタリングにより、個々の散乱体からのエコー強度は散乱体が存在する高度に依存して重み付けされる(レンジ重み付け効果)。レンジ重み付け効果により、サンプルレンジ中心に近い散乱体のエコー強度は大きく重み付けされ、サンプルレンジ中心から離れた散乱体のエコー強度は小さく重み付けされる。そのため、測定された位相差の中央値あるいは平均値を用いることで、散乱体が存在する高度のばらつきによる− の推定誤差を減ずることができる。式(5)に示す方向拘束条件のもとで を最小とする は、以下の式(7)で表される。 (7)RIMでは、() において所望の高度以外に存在する非所望エコーの混入が最小となるように を決定することで、レンジ分解能を向上する。そのため、エコーの信号対雑音比(Signal to Noise Ratio:SNR)や高度分布などに依存してレンジ分解能が変化する。RIMは、同じ送信周波数帯域を使用する短パルス送信を行う場合と比較して、送信パルスの周波数スペクトルにおける送信周波数帯域外の成分(スプリアス)が小さい利点がある[11]。また、RIMでは、FMCWを用いたパルス圧縮と比較してレンジエリアシングの影響を小さくできる。一方、RIMでは送信毎に周波数を切り替えるため、RIMを使用しない場合と比較して受信信号に対するナイキスト周波数(ナイキスト速度)が低下することに注意が必要である。また、複数の周波数を用いるRIMでは可能となる受信信号の時間積分回数が減るため、RIMなしの場合と比較してSNRの面で不利となることに注意が必要である。さらに、RIMにより達成されるレンジ分解能は送信パルス幅で決定される通常のレンジ分解能よりも優れるため、() の強度とエコー検出感度がレンジ重み付け効果の影響を受ける点に注意が必要である。レンジ重み付け効果による() の強度とエコー検出感度の低下は、送信パルスの端付近に相当するレンジにおいて顕著となる[12]。RIMにおける周波数変化は最大でも数MHzの範囲であるため、既設のWPRのハードウェアに対する送信毎の周波数切替え機能の付加とデジタル受信データ処理機能の改修により、RIM機能を実装することができる。LQ-13では、STALOを改修することで送信における周波数変換の最終段で送信毎に周波数を切り替えている。そのため、中間周波数(Intermediate Frequency:以下IF)でのアナログ信号用ハードウェアは変更することなく使用している。3.2オーバーサンプリング(OS)OSは、送信パルス幅よりも小さい時間間隔で受信信号のレンジサンプリングを行う観測手法である。レンジ重み付け効果のため、RIMのみを使用する(OSを使用しない)場合では、() の強度とエコーの検出感度がレンジ方向に依存する。レンジ重み付け効果による() の強度とエコー検出感度の低下は、送信パルスの端付近に相当するレンジにおいて顕著となる。OSとRIMを併用し、RIMを適用する所望レンジとサンプルレンジの差を小さくすることで、レンジ重み付け効果によるエコーの検出感度低下を小さくできる[12]。OSは、RIMを用いない場合にも有用である。大気エコーは送信パルス幅で決定されるレンジ分解能よりも小さい鉛直スケールを持つことが多いため、OSを用いることでレンジ重み付け効果による検出感度の低下や風速の高度プロファイル測定における不確かさを減らすことができる。OSと適応信号処理を用いた鉛直分解能の向上手法も提案されている[13]。3.3コヒーレントレーダーイメージング(CRI)図4にCRIの概要説明図を示す。CRIでは、サブアレイから得られた受信信号を重み付き合成することで、角度分解能を向上する。 を決定するための適応信号処理には、RIMの場合と同様にCapon法の原理を用いることができる[6][14][15]。そのため、CRIにおける信号処理は、サブアレイから得た受信信号を用図3周波数チャンネルが異なる受信信号の相互相関から得た位相差の測定例。ヒストグラムは位相差の分布を、赤点線は位相差の平均値をそれぞれ示す。312-5 次世代ウィンドプロファイラの研究開発

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