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いることと、 が異なることを除き、() 及び の決定に用いる式(2)-(5)及び式(7)は同じである。サブアレイ毎に得た受信信号の位相情報を利用してレンジ分解能を向上するCRIは、空間領域干渉計法(Spatial Domain Interferometry:SDI)とも呼ばれる。レンジ ・時間 における受信信号() を、以下の式(8)で表す。()=()()() (8)N は使用するサブアレイの数、 はi 番目のサブアレイから得られた受信信号である。 は以下の式(9)で表される。1N,,…, (9)ここで はi 番目のサブアレイの中心座標である。 は所望方向における波数ベクトルであり、以下の式(10)で表される。 (10)ここで は送信波長、 と はそれぞれ所望方向の方位角と天頂角である。式(9)では、サブアレイの受信初期位相が較正されていることと、各サブアレイの雑音レベルが同一であることが仮定されている点に注意が必要である。CRIでは、() において所望方向以外に存在する非所望エコーの混入が最小となるよう を決定することで、角度分解能を向上する。そのため、エコーのSNRや空間分布などに依存して角度分解能が変化する。非所望方向に存在する大気エコーとクラッタの両方が、CRIにより抑圧される対象となる。CRIでは、受信アンテナビームのメインローブ形状が受信信号の状態により変化するため、測定された大気エコーの強度やスペクトル幅の定量的な解釈に注意が必要である。3.4アダプティブクラッタ抑圧(ACS)ACSは適応信号処理を用いた受信信号の重み付き合成を行う点でRIM及びCRIと同様であるが、ACSでは大気エコーのSNRの低下(受信アンテナビームのメインローブ形状の変化)を抑えつつクラッタを低減することを目的としている。DCMPの原理は受信アンテナビームのメインローブ形状が大きく変化することを許容しているため、ACSでは の決定に用いる適応信号処理としてノルム拘束・方向拘束付き電力最小化法(Norm-Constrained DCMP:NC-DCMP)[16]-[18]を用いる。ACSには、主アンテナを構成するサブアンテナをサブアレイとして用いる方法[19][20]と、主アンテナ及び主アンテナのメインローブ方向に感度を持たないクラッタ抑圧用サブアレイアンテナ(以下、クラッタ抑圧用サブアレイ)を用いる方法図4CRIの概要説明図。図では一定の方位角方向における受信信号の利得変化を示しているが、実際の受信信号の利得は方位角と天頂角の両方で変化することに注意。32   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)2 地上レーダーによる気象現象の観測

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