4.2RIM・OS・ACS機能の実装 4.1に述べたデジタル受信機では、最大10 MS s-1のオーパ-サンプリングが可能である。つまり、送信パルス幅1 μsの場合において最大10倍のOSが可能である。また、デジタル受信機は、RIMのため送信周波数毎に取得された受信信号に対してリアルタイムデジタル受信データ処理を行う機能を持つ。開発したデジタル受信機を用いることで、RIMとOSを併用した高鉛直分解能測定を可能とした。LQ-13に接続するACSシステムを開発した。図7に、現在LQ-13に接続されているACSシステムの構成及び機能の説明図を示す。また、図8にACSシステムの外観を示す。本ACSシステムは地上もしくはその付近に存在するクラッタを抑圧することを主な目的としているため、クラッタ抑圧用サブアレイ(Subarray)には、低仰角のクラッタに対し感度を有する7段コリニアアンテナを使用している。コリニアアンテナは水平面内で無指向性である。5本のクラッタ抑圧用サブアレイのそれぞれから得られた受信信号は、アンテナ直下に設置された屋外ユニット(Outdoor Unit)に伝送される。屋外ユニットには、アンテナからの受信信号を増幅する低雑音増幅器(Low Noise Amplifier:以下LNA)に加え、リミッタ(Limiter)と送信時に入力を遮断するスイッチ(Isolating Switch)が設置されている。リミッタとスイッチは、送信時に入力される大電力からLNAを保護するとともに、クラッタ抑圧用サブアレイからの過大な入力によるLNAの飽和を防ぐことを目的としている。LNAで増幅された受信信号は、屋内ユニット(Indoor Unit)に伝送される。屋内ユニットでは、周波数変換器(Frequency Converter)によるIFへの周波数変換、増幅器(Amplifier)による受信信号の増幅、受信された送信パルスを遮断するスイッチ(Isolating Switch)による後段の機器(USRP X310)の保護、バンドパスフィルタ(Band Pass Filter:BPF)による受信信号の周波数帯域制限を行う。IFは130 MHzである。BPFは、受信された送信パルスを遮断するスイッチの動作により生じるノイズを低減する目的でも使用されている。屋内ユニットの出力は、デジタル受信機に入力される。デジタル受信機は、主アンテナ及び5台のサブアレイからの受信信号に対するリアルタイムデジタル受信データ処理を行う。LQ-13による、RIM・OS・ACSを用いた大気下層の観測例を図9に示す。LQ-13では、5波の周波数切替え送信を用いたRIMを実施している。送信周波数の差は最大1.5 MHzである。1 μsの送信パルス幅に図7LQ-13に接続されているACSシステムの構成及び機能の説明図。Isolating Switchは送信時に入力を遮断するスイッチを、LNAは低雑音増幅器を、BPFはバンドパスフィルタをそれぞれ示す。36 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)2 地上レーダーによる気象現象の観測
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