HTML5 Webook
41/134

対し、レンジサンプリング間隔0.2 μs(レンジ間隔30 m)のOSを行っている。鉛直流は約8.2秒毎に取得されているが、得られたドップラースペクトルを2回時間方向に積分している(インコヒーレント積分している)ため、図9に示す鉛直流の表示間隔は約16.4秒である。ACSを用いることで、地表に存在する固定クラッタ(グラウンドクラッタ)の影響を低減している。RIMを用いることで、サーマルや大気不安定の発生に伴うと考えられる鉛直方向の風速(鉛直流)の変動を詳細に捉えている。科研費基盤S研究(課題名:ストームジェネシスを捉えるための先端フィールド観測と豪雨災害軽減に向けた総合研究)において、RIM機能を持つ境界層レーダー(Boundary Layer Radar:以下神戸BLR)が兵庫県神戸市において設置・運用されている。NICTが開発した3台のクラッタ抑圧用サブアレイを持つACSシステム[23]とデジタル受信機が、BLRに付加されている。さらに、LNAを収納した屋外ユニットをクラッタ抑圧用サブアレイの直下に追加することで、クラッタの検出感度を向上させている。本科研費の研究目的のひとつは、晴天域に発生する上昇流が雲を発生させ、さらに発生した雲が豪雨をもたらす積乱雲に発達するまでの諸過程をマルチセンサ観測により捉えることである。晴天大気中における上昇流を高分解能で観測することが可能な神戸BLRと気象レーダー、雲レーダー、ライダー、ラジオゾンデ(気球)観測等を併用したマルチセンサ観測により、積乱雲を発達させる大気中の諸過程の解明に取り組んでいる。次世代ウィンドプロファイラの実用化と標準化を目指した取組み     NICTによるACSの開発成果を基に、NICTの高度通信・放送研究開発委託研究(課題名:次世代ウィンドプロファイラの実用化に向けた研究開発)が昨年度(2018年度)から実施されている。本委託研究では、ACSの実用化を目指した実証実験を実施する。また、ACSの実証実験に使用する機材(以下、実証実験用機材)も製作する。以下に、ACSの実証実験用機材の製5図8ACSシステムを構成するクラッタ抑圧用サブアレイ、屋外ユニット、及び屋内ユニットの外観。デジタル受信機の構成品であり、ACSシステムから出力される受信信号に対するリアルタイムデジタル受信データ処理を行うUSRP X310の外観も示されている。図9 LQ-13による、RIM・OS・ACSを用いた大気下層の観測例。(a)は輝度(エコー強度)の、(b)は鉛直方向の風速(鉛直流)の時間高度変化をそれぞれ示す。372-5 次世代ウィンドプロファイラの研究開発

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る