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はじめにPi-SAR X2による定性的な地表面把握は、これまでの研究によってほぼ実用レベルになっている。例えば、噴火後の火口の状況把握(新しい火口の発見や噴火に伴う地形の変化等)や河川の決壊等による浸水被災地の状況把握(水面として判読できる浸水地域の特定等)については実用レベルに達している。一方、Pi-SAR X2で観測された地表面データを定量的に解析し、人の行動決定に資する情報(以後、AI(Actionable Information)と呼ぶ)の抽出については、まだ研究途上段階である。特に、災害発生時における行政実務者、救助活動者及び被災者らが、その行動を決定するために活用できるAIについては、ほとんど抽出できていない。例えば、小林ら[1]は東日本大震災直後の被災地のPi-SAR X2の偏波解析を行っているが、避難や救助等で活用することができるAIは抽出されていない。このため、Pi-SAR X2の観測データが避難、救助及び災害復旧等に活用されてこなかった。避難や救助で活用することができるAIの抽出技術の研究開発は、社会的に強く求められている。この問題を解決するために、NICTではPi-SAR X2から得られる観測データ(画像データ)とDEM等のGISデータを統合的に解析し、AIを抽出するための研究開発を進めている。本研究では、Pi-SAR X2の観測データとGISデータを用いて東日本大震災の津1本研究では、NICTで研究開発している航空機搭載合成開口レーダーPi-SAR X2で観測した画像データとGISデータを総合的に解析することで、高精度に浸水地域を抽出することができる新しい解析法を開発した。開発した解析法の妥当性を検証するために、Pi-SAR X2によって観測された東日本大震災直後の仙台空港周辺の画像データとGISデータから浸水マップを作成し、国土交通省都市局の復興支援調査アーカイブデータの浸水深マップと比較・検証を実施した。検証の結果、新しい解析法によって、高精度に浸水マップを算定できることを確認した。さらに、本研究では、SAR画像とGISデータを用いることでSAR画像のみでは推定することができなかった浸水深マップを作成する新しい解析法も開発した。NICT developed the second-generation X-band air-borne SAR system (Pi-SAR X2) and have been carrying out the observation for the application research such as disaster monitoring. In this study, a new analysis method was developed for detecting flooded areas with high accuracy by analyzing GIS data and image data observed by Pi-SAR X2. To verify the flooded area estimated by this method, the flooded area map around Sendai Airport was estimated from GIS data and SAR image observed immediately after the Great East Japan Earthquake, and was compared with the flooded depth map created by Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism. As a re-sult of verification, it was confirmed that the new analysis method can estimate flooded area maps with high accuracy. Furthermore, a new algorithm was developed for estimating the flood depth map by using SAR image and GIS data.3 航空機SARによる地表面の観測3Observation of Land Surface by Airborne Synthetic Aperture Radar3-1 航空機搭載合成開口レーダーPi-SAR X2とGISによる浸水地域の検出法に関する研究3-1Research on detection method of flooded areas by NICT airborne synthetic aperture radar (Pi-SAR X2) and GIS児島正一郎 有馬悠也Shoichiro KOJIMA and Yuya ARIMA493 航空機SARによる地表面の観測

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