波によって浸水した仙台空港周辺の浸水マップを高精度に算定し、さらに、SAR画像のみでは推定することができなかった浸水深マップを推定することを目的に研究を進めた結果について報告する。Pi-SAR X2についてPi-SAR X2は、Pi-SARの機能と性能を向上させることを目的に、2006年から開発が進められ、2008年に初期段階の開発が完了した[2]。2008年以降、Pi-SAR X2の研究開発は初期機能・性能確認試験を経て、応用研究と新たな機能を追加するための機器開発が行われてきた。図1にPi-SAR X2のシステムを搭載した航空機(Gulfstream II)とアンテナポッドの中に格納されているアンテナの写真を示す。Pi-SAR X2は、アンテナ部を除く送受信部、記録部、電源部及び制御部等の機器はすべて航空機内部に設置され、操作者(1名)が観測計画に基づいて制御PCを通じてそれらの機器を操作している。アンテナ部(アンテナとアンテナ駆動装置)は、機体の胴体下部に設置されている2つのポッドの中に格納されている。メインアンテナポッド(図1右下写真)の中には送受兼用の垂直偏波アンテナ(上部)と水平偏波アンテナ(下部)が格納され、サブアンテナポッド(図1左下写真)の中にはクロストラック干渉(CTI)SAR用の受信アンテナ(上部)とアロングトラック干渉(ATI)SAR用の受信アンテナ(下部)それぞれが格納されている。CTI機能は地表面の高度を計測すること目的に開発(2008年)され、ATI機能は車両や船舶等の移動体の視線方向の速度を計測することを目的に開発(2011年)された。ただし、ATI用に開発されたアンテナは垂直偏波専用で、帯域300 MHzまで(中分解能モードと広域観測モード)しか対応していなかった。このため、 2016年に両偏波(垂直偏波と水平偏波)に対応し、Pi-SAR X2の高分解能モード(分解能:30 cm、帯域:500 MHz)で移動体を計測することができる新しいアンテナが開発された[3][4]。電波の照射方向は、機械的にアンテナの向き(可動範囲:40〜60度)をアンテナ駆動装置によって制御することで、任意の方向に向けることができる。また、アンテナ駆動装置は、機首方向と機体の進行方向が異なることに伴う電波の照射方向の誤差を修正するために、ヨー方向にアンテナを回転させることができる。ヨー方向の回転角の範囲は、±7度の範囲である。表1にPi-SAR X2の諸元を示す。2図1 Pi-SAR2のアンテナポッドとGulfstreamⅡ‣二軸アンテナ駆動部:レンジ方向の観測可能範囲: 10-65 deg.ヨー補正角範囲: ±9 deg.ヨー補正のためのアンテナ移動速度:0.1(Min)-5(Max) deg/s67㎝19.7㎝20㎝75㎝40㎝11.5㎝40㎝19.7㎝67㎝Main podSub pod表1 Pi-SAR X2の諸元Mode 1Mode 2Mode3観測法ストリップマップ偏波HH&HV&VH&VV中心周波数9.55 GHz9.65 GHz9.65 GHz帯域幅500 MHz300 MHz150 MHz0.3 m0.5 m1.0 m0.3 m (1look)0.6 m (2looks)0.6 m(2looks)雑音等価後方散乱係数-27 dB以下-27 dB以下-30 dB以下信号対偽像比25 dB以上観測幅5 ~10 km7 ~10 km10 km以上入射角の範囲20~60°0.25 m0.5 m1.0 m0.25 m0.5 m1.0 m50 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)3 航空機SARによる地表面の観測
元のページ ../index.html#54