Pi-SAR X2による仙台空港周辺の観測Pi-SAR X2による浸水地域の解析は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の津波によって浸水した仙台空港周辺地域を対象とした。津波による浸水被害は、東北地方沿岸域から北関東沿岸域にかけての範囲で発生し、場所によっては海岸線から10kmを超える範囲で浸水被害が発生した。図2にPi-SAR X2によって観測された仙台空港周辺のVV偏波の画像を示す。観測は、2011年3月12日8時頃(東日本大震災発生してから17時間30分後)に実施した。この図において、黒色は水面や道路等の滑らかな表面を示している。通常、陸上においては、河川等の水面や道路以外の地表面が黒色になることはないため、河川等の水面や道路を除く陸上の黒色は浸水している地域を示している。浸水地域と非浸水地域の大まかな分類は、画像の2値化によって分類することができる(2値化法)。浸水地域と非浸水地域を識別するための閾値は、図2の赤枠で示した部分(10 pixel×10 pixel)の輝度値の平均値Ave_waterを浸水地域での輝度値の代表値とし、Ave_waterの値よりも小さい輝度値を浸水している地点とした。図3に2値化によって識別した浸水地域と非浸水地域を示す。白色は浸水地域を示しているが、図3の赤丸で示した地域(人工構造物が密集する地域)は、海岸線に近接しているが非浸水地域として分類されている。人工構造物が密集する地域では、レイオーバーによって、水面の後方散乱と建物の側面からの後方散乱が重なり合い、浸水している水面を識別することができない。図4にレイオーバーによる後方散乱の重畳のメカニズムを示す。SARは、進行方向に対して横斜め下方向に電波を照射して、地表面からの後方散乱波の信号を受信・画像化している。画像化される観測対象物の位置は、SARを搭載している飛翔体と観測対象物との距離で決まっているため、図4のA地点とB地点は飛翔体からの距離が同じであり、SAR画像中では両者の位置は同一になる。同様に、直線ACと直線BCは、SAR画像中では同じ位置となる。人工構造物が密集している地域では、レイオーバーによって浸水地域からの後方散乱波に建物からの後方散乱波の信号が重畳され、浸水地域を識別することが困難となる。このため、SAR画像のみを使用して、人工構造物が密集する地域で浸水地域を高精度かつ安定して抽出することはできない。さらに、河川の水面や道路等の滑らかな表面を有する地表面は、2値化によって浸水地域として分類される可能性があり、大きな誤差要因となる。本研究では、これらの問題を解決するために、Pi-SAR X2の観測3図2東日本大震災直後(2011年3月12日)の仙台空港周辺のVV偏波画像(6km×6km)レンジ方向アジマス方向図3 浸水マップ(白:浸水、黒:非浸水) 白色:浸水黒色:非浸水図4 浸水マップ作成の問題(レイオーバー)ABABSAR画像レイオーバーにより、A点はB点と重なるCC513-1 航空機搭載合成開口レーダーPi-SAR X2とGISによる浸水地域の検出法に関する研究
元のページ ../index.html#55