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津波到達水面の標高よりも低い標高地域は浸水しているとしてDEMから浸水地域を算定した。さらに、津波到達水面の標高値と浸水している地域のDEMの標高値との差を算定することにより、浸水している地域の浸水深を算定した。図10と図11に算定した浸水マップと浸水深マップを示す。図10において、紺色は浸水地点を示している。推定した浸水地域の評価推定した浸水マップ・浸水深マップの妥当性を評価するために、国土交通省都市局の「東日本大震災津波被災市街地復興支援調査」のアーカイブデータ(復興支援調査アーカイブデータ)の浸水深マップとの比較を行った。図12に国土交通省都市局の浸水深マップ(100mメッシュ)を示す。国土交通省都市局の浸水深マップは、調査地点での津波の痕跡からその高さを計測して作成されている。このため、SAR画像とGISデータから推定した浸水深マップと国土交通省都市局の浸水深マップとを単純には比較することはできないが、両者の浸水域のパターンはほぼ一致しており、本研究で提案した浸水地域の抽出法の有用性が示されている。考察と今後の予定本研究では、東日本大震災直後の仙台空港周辺をPi-SAR X2の画像データとGISデータを用いた解析を行うことで、SAR画像のみでは抽出することが困難であった人工構造物が密集する地域における浸水地域を抽出し、浸水マップ・浸水深マップを作成した。また、浸水地域の推定の誤差要因となる水面や道路に関してはGISデータを用いて解析領域から除去することで、浸水マップの推定精度を向上させた。河川氾濫や津波による浸水は、発生からの時間や発生場所によって以下に示す3つの状態に分類することができる。••浸水形態1:浸水が低地部分から高地部分に向かって広がる状態(図13(a))••浸水形態2:水の供給がなくなり、浸水地域が縮小している状態(図13(b))••浸水状態3:浸水地域が縮小し、浸水箇所が飛び石状態になっている状態(図13(c))本提案手法は浸水形態1の浸水地域の推定には適用可能であるが、それ以外の状態に対しては別のアルゴリズムを検討する必要があり、今後の研究課題のひとつである。また、浸水深マップの定量的な評価をどのように実現するかについても検討していかなければならない。本研究により、SAR画像とGISデータを総合的に67図12 国土交通省都市局の浸水深マップ図13 浸水の形態時間(a)(b)(c)図11 浸水深マップ54   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)3 航空機SARによる地表面の観測

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