阿蘇大橋近辺で生じた大規模土砂崩れの差分高解析2016年4月16日午前1時25分に最大震度7の地震が熊本地方で発生した[24]。これを受け、NICTでは翌日の4月17日早朝にPi-SAR2による被災地の緊急観測を実施した[25]。実は、NICTでは約4か月前の2015年12月15日に阿蘇山の活発化に伴い、熊本地方の観測を実施していた。この観測データを事前データとして有効活用すべく、4月17日の被災地付近の観測においては、2015年12月の観測に基づきその飛行経路が決定された。図2に阿蘇大橋近辺で生じた土砂崩れについての地震前後の観測画像例を示す。これらの画像サイズはレンジ方向、アジマス方向それぞれ2 kmであり、ほぼ平行な観測軌道で取得されたものである。図中の色は偏波を疑似カラーで表したものである。送受信の偏波が同一の偏波(ライク偏波)を赤/青として、送受信の偏波が異なる偏波(クロス偏波)を緑として着色すると、植性の存在する場所ではクロス偏波が卓越するため緑色に、地面ではライク偏波が卓越するため紫色に見えることが知られている[26]。図2中の丸枠で示した部分を見ると、地震前は緑色だったのに対し、地震後は紫色に変色している様子が見て取れる。この場所で発生した土砂崩れに伴い、生え揃っていた木々がなぎ倒され地面が露出したことが画像の比較から読み取れる。図3に地震前後における高さマップを示す。参照点としては、国土地理院の10 mメッシュDEM [27]を用いた。色の違いから各々のマップにおける山谷の高低差は視認できるものの、地震前後での高さ変化量の読取は難しい。このことから変化量を把握するためには差分高マップが必須であることが分かる。文献[16]3図2 地震前(a)、地震後(b)の偏波疑似カラー画像。Hを水平偏波、Vを垂直偏波、XYをX偏波送信、Y偏波受信と表した場合、HH、HV、VVをそれぞれ赤、緑、青として着色している。丸枠は本稿での解析対象の土砂崩れ位置を示す。2015/12/052016/04/17(a)(b)アジマス方向レンジ方向図3 地震前(a)、地震後(b)の高さマップ。黒い部分は干渉度が基準に満たなかったため高さが算出されていない部分である。2015/12/05(a)300 m600 m2016/04/17(b)300 m600 m593-2 クロストラック干渉SARデータセットの土砂崩れに関する解析
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