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の手法に基づき作成した差分高マップを図4に示す。なお、4での他センサーデータとの比較のため、座標系はレーダー座標系から地図座標系へ変換している。この図では地震後に高さが低くなった場合は青、高くなった場合は赤で示している。一見して明らかなように土砂崩れ発生場所では、青色に着色されている、つまり高さが低くなっている様子が見て取れる。その一方、その他の土砂崩れの発生していない場所では、極端に赤青に寄った色はほとんど見られない。つまり高さ変化が小さかったと判断できる。以上のことからXTIによる高さ計測データの差分をとることにより、土砂崩れに伴う高さ変化を抽出できていることが分かる。他センサーデータとの比較 3で得られたXTIによる差分高マップについて評価するため、文献[20]により報告されている地震前後のレーザー測量データによる解析結果との比較を行った。図5に図4中の緑線で示した位置における断面図を示す。なお、断面を取った位置は文献[20]と必ずしも一致しない可能性がある点に注意されたい。文献[20]にならい、図中に示したように3つのエリアに分割してそれぞれ比較する。まず、エリア1においては、図5では10 mから15 m程度の高度低下を示しているのに対し、文献[20]では最深部で20 m以上の低下があったと報告されている。このことはXTI計測による結果が5 mから10 m程度崩壊深を浅く見積っていることを意味する。次にエリア2においては、エリア1とは逆に0 mから 5 m程度XTI計測結果の方が深く見積もられていた。エリア3においては、図5中の矢印部を除き0 mから 5 m程度 XTI計測による差分高マップの方が浅く見積もられていた。なお、図4においてはエリア2とエリア3との間に明瞭な崖線を見て取れるが(図4矢印参照)、図5では不明瞭である。南北方向(図の上下方向)の位置により崖の勾配に差異がある可能性がある。土砂崩れ発生前の空中写真と見比べた結果、エリア2における差異は次のように解釈できる(図6)。すなわち、XTI計測による差分高は樹木の高さを含めた高さ変化量に相当する一方、文献[20]では地表面の高さ変化がプロットされているため差異が生じていると考えられる。エリア3の矢印部において文献[20]の断面図では見られない深さ25 m程度の高度低下が見られるが、この差異も同様に樹林の影響が疑われる。樹木の影響が表れているということは、裏を返すとXTI計測の差分高マップ解析を通じてなぎ倒された樹木量を推定できる可能性があることを示唆している。災害からの復旧に際し、これらの樹木も除去・運搬する必要があることを考えると、なぎ倒された樹木量も意味のある計測量と考えられ、今後その利用価値を見極める必要がある。一方、エリア1において崩壊深が浅く見積もられていることについては、樹林の影響では説明できない。図6に示したように、樹木の影響があるとすれば逆にXTI計測の差分高の方が低くなるはずである。この誤差要因のひとつとしては、2で述べた本稿で使用した差分高マップの導出方法[16]の過大近似の影響が疑われる。この影響の度合いを評価するためには、地震4-20 m0 m+20 m図4 XTI計測による差分高マップ。黒い部分は座標変換に伴うデータ空白部分及び干渉度が基準に満たなかったため差分高が算出されていない部分である。緑線は図5の断面位置を示す。矢印はエリア2とエリア3の境の崖線位置を示す。エリア1エリア2エリア3図5 図4の緑線の位置における土砂崩れの断面プロファイル。横軸の向きは上流から下流である。60   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)3 航空機SARによる地表面の観測

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