HTML5 Webook
68/134

類、回帰、認識などの問題に高い性能を示す[6] [7]。そこで、SAR観測データを深層学習によって処理することで、情報を利用しやすい形に加工することを考える。本報告では、Pi-SAR X2により観測された画像に対し、深層学習による画像分類手法を応用することで植生を含む土地被覆分類を行う。深層学習によるPi-SAR X2観測データの土地被覆分類手法     Pi-SAR X2はフルポラリメトリックのデータを取得できる[4]。つまり、水平偏波と垂直偏波の信号をそれぞれ照射し、水平偏波と垂直偏波それぞれのアンテナで受信することで、4つの観測データを取得する。それぞれのデータは水平偏波をH、垂直偏波をVとして、送信と受信の組み合わせでHH、HV、VH、VVと表示する。地表の物体によって散乱される偏波の特性が異なることが知られている。典型的な例として、2回反射散乱が支配的となる人工建造物では、送信と受信の偏波が同じライク偏波(HH/VV)成分が卓越し、体積散乱が支配的となる植物などでは送信と受信で偏波が変わるクロス偏波(HV/VH)成分が卓越する[8]。このような偏波特性の違いを基準に深層学習を用いて土地被覆分類を行う。つまり、通常の画像分類でRGBの3成分を入力するところに、代わりにHH/HV/VH/VVの4chのデータを入力する。深層学習で学習する際の教師ラベル及び学習後の検証の際の正解ラベルは地理情報システム(Geographic information system: GIS)データから取得する。今回はGISデータとして環境省生物多様性センターが提供する 「1/25,000植生図GISデータ」を用いた[9]。このデータは第6回自然環境保全基礎調査(1999–2004)及び第7回自然環境保全基礎調査(2005–)に基づいて作成されたもので、現地調査と空中写真判読によって約900の植生区分に分類されている。この分類を基に14のクラスに統合を行い、ラベルとして用いた。学習のモデルとして畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional neural network: CNN)を採用する。CNNは画像や動画認識に広く使われる深層学習モデルの一種である[10]。5層の畳み込み層と3層の全結合層を持つネットワークを構築し学習を行った。実験今回の実験では2011年10月5日に観測された伊豆諸島神津島南部の4 km×4 kmの範囲の観測データを使用した。画像としてのサイズは16,000ピクセル×16,000ピクセルである。HH偏波をR成分、HV偏波をG成分、VV偏波をB成分として作成した擬似カラー画像を図1に示す。この画像で左方向が航空機の進行方向(アジマス方向)、下方向がレーダーの照射方向(レンジ方向)である。SARは航空機から斜め下方向に観測を行っているため、画像には各地点の標高に応じた倒れ込みが生じている。そこで、国土地理院提供の数値標高モデル(Digital elevation model; DEM)[11]を用いて正射投影(オルソ)補正を行っている。ネットワークへの入力としてはHH/HV/VH/VV偏波それぞれの散乱強度画像から切り出した128ピクセル×128ピクセルのパッチ画像を用いる。パッチは縦横16ピクセルずつのスライドで切り出していき、23図1伊豆諸島神津島南部のPi-SAR X2観測データの擬似カラー画像(R:HH、G:HV、B:VV)。観測日2011年10月5日、中心座標:北緯34度11分58秒、東経139度8分13秒。AzimuthRange図2 散乱強度(HH偏波)と教師ラベルの重ね合わせ画像14 市街地等 13 裸地 12 公園 11 牧草地・ゴルフ場・芝地 10 畑・水田・雑草群落 9 果樹園 8 落葉広葉樹林 7 常緑広葉樹林 6 針葉樹林 5 低木群落 4 タケ・ササ群落 3 草原 2 湿原・河川・池沼植生 1 開放水域 0 undefined 64   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)3 航空機SARによる地表面の観測

元のページ  ../index.html#68

このブックを見る