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ルは観測領域に比べ十分大きいと考え、海面波浪などによる小さな空間スケールを持つ後方散乱係数の変化を平均化すればよいと考えていた。図2にみられる後方散乱係数のばらつきは、5km程度のスケールを持つ後方散乱係数の変化が実際に存在することを示唆しており、ある海上風条件下で海面後方散乱係数の代表値を求める場合には5km以上のアジマス平均処理が必要と考えられる。5.3海面後方散乱係数の入射角、相対風向依存性アジマス平均化スケールの影響を検討するため、アジマス平均スケールを5km及び10kmとして求めた海面後方散乱係数の入射角及び相対風向依存性を図3に示す。図3には衛星搭載合成開口レーダーで求められたモデル及び航空機搭載散乱計による結果も併せて示す。海面後方散乱係数の入射角依存性に対するアジマス平均スケールの影響は小さい。また、モデルの計算結果に対しては数dB小さい後方散乱係数となっている。一方、航空機搭載散乱計の結果とは良い一致を見せている。一方、海面後方散乱係数の相対風向依存性については、係数a1, a2ともモデルに対して大きな値となっている。特に、入射角35度から45度で表れている係数a2の1に近い値は、式(1)で計算される後方散乱係数が負となる可能性を示しており、この観測だけに基づいて後方散乱係数モデルを作成することが不適当であることを示している。しかしながら、アジマス平均スケールを10kmとした場合、係数a2はアジマス平均スケール5kmよりも小さな値となっており、サンプル数を増大することでモデルの精度を改善できる可能性が示されている。加えて、係数a1については入射角32度においてはモデルよりも散乱計に近い値となっており、モデルにも改善の余地があることを示唆している。終わりに本研究では、航空機搭載合成開口レーダーを用いて、短時間のうちに複数の方向から行った同一海面の観測により海面後方散乱係数の入射角、相対風向依存性を計測する可能性について検討した。海面後方散乱係数が持つ依存性を決めるためには、ある海上風条件下における代表的な海面後方散乱係数を決める必要がある。広域的には一様な海上風であっても、その中には小さな空間スケールを持つ変動が存在するため、空間平均処理により代表的な後方散乱係数を算出する必要がある。6c 観測番号9003a 観測番号9001b 観測番号9002図1海面後方散乱係数算出におけるレンジ平均スケールの影響 黒: e-folding scale 0.5度。橙: e-folding scale 1度。青: e-folding scale 2度。70   情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 1 (2019)3 航空機SARによる地表面の観測

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