り、ホーンアンテナ8個を合成してアンテナ1素子に、全体では32素子のフェーズドアレイアンテナである。現在は図5中下に示す32ch合成器とその前段にある位相器により走査方向を制御する逐次走査方式の電子走査レーダーであるが、W帯の周波数では世界初の電子走査雲レーダーとなる。観測例を図6に示す。横軸が水平方向の距離、縦軸は鉛直方向の距離であるが、横に拡大されている。各視線方向のデータ取得は約0.1秒であり、63走査角度で観測しているため、一枚の画像を作成するのに約7秒を必要とする。今後、図5右に示す32chデジタル受信器に移行する予定である。32chデジタル受信器を用いれば、計算処理により信号を合成するデジタルビームフォーミング(DBF)により同時に各走査方向からの信号を取得することができる。図6に示したデータの取得は0.1秒で行えることになり、表2に示した観測感度は装置のDBF化を前提にしている。この取得データを用いて、EarthCARE/CPRで取得するドップラ速度観測の誤差評価、積分処理アルゴリズム改善[9]につなげていく計画である。今後の展望今回開発した検証用レーダーは、衛星打上げ後の検証だけでなく、衛星打上げ前から処理アルゴリズム開発等にも有用なデータ取得を実施する計画である。NICT本部(東京都小金井市)を国内のEarthCAREの検証サイトと位置づけ、必要な機器を集める計画になっている。図7にNICT雲観測サイトを示す。雲レーダー以外の機器はNICTのほかの研究者が運用する機器であり、ライダの一部はEarthCAREの検証のため国立環境研究所がNICTで運用する観測機器である。今後、これらの機器を有効に活用して、衛星データ処理アルゴリズム開発に役立て、衛星打上げ後は衛星プロダクトの検証として有効に活用したい。また、ここで得られた知見から、次世代雲観測レーダーの開発につなげたい。【参考文献【1A. J. Illingworth, H.W. Barker, A. Beljaars, M. Ceccaldi, H. Chepfer, N. Clerbaux, J. Cole, J. Delanoë, C. Domenech, D.P. Donovan, S. Fukuda, M. Hirakata, R.J. Hogan, A. Huenerbein, P. Kollias, T. Kubota, T. Nakajima, T.Y. Nakajima, T. Nishizawa, Y. Ohno, H. Okamoto, R. Oki, K. Sato, M. Satoh, M.W. Shephard, A. Velázquez-Blázquez, U. Wand-inger, T. Wehr, and G. van Zadelhoff, “The EarthCARE Satellite: The Next Step Forward in Global Measurements of Clouds, Aerosols, Pre-cipitation, and Radiation,” Bull. Amer. Meteor. Soc., vol.96, pp.1311–1332, 2015.2岡本謙一,尾嶋武之,増子治信,吉門信,猪股英行,畚野信義 “航空機搭載用マイクロ波雨域散乱計/放射計システムによる降雨のリモートセンシ6項目性能周波数(Frequency)94.02 GHz送信出力(TxPower)EIK (peak電力1500W)アンテナ利得(Antenna Gain)送信(Tx): 37.3 dBi*受信(Rx): 48.4 dBi*ビーム幅(度)(Beam Width: degrees)送信(Tx): 0.63x8.84 度(deg.)受信(Rx): 0.52x0.53 度(deg.)アンテナ口径(個数)20x20mm, 8個x32列パルス幅(Pulse Width)0.5/1.0/2.0μs 繰返周期(PRF)4,000 -10,000 Hz受信感度(Sensitivity)-27.57 dBZ@5km*, **アンテナ走査(Antenna Scanning)+/-4.5度(1次元)+/-4.5deg.(1-Dimention.)観測レンジ(Range)150m(500m) -20kmドップラ速度計測(Doppler Function)パルスペア処理を想定(Pulse-Pair Processing)* 走査角度0度方向(Boresight Direction) **1秒積分時(Integration 1 second)表2 電子走査雲観測レーダー(ES-SPIDER)の主要諸元コンテナ敷地図7 NICT雲観測サイトW帯雲レーダー(HG,ES)ウィンドプロファイラシーロメータ・ライダ等マイクロレインレーダーマイクロ波放射計等雲カメラ834-2 EarthCARE衛星搭載CPR検証用地上設置W帯雲観測レーダーの開発
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