使用する[20]。2THz帯にはNICT等で開発しているHEB (hot-electron bolometer)ミキサを使用する予定である[21]。638GHz帯、763GHz帯、2THz帯の受信機を同時に使用する構成になっていて、アンテナで集光した大気からの信号は、ローカル信号(LO)を一定の割合(5 %程度など)で加えた後、クライオスタットの中でフィルタによりそれぞれの周波数帯のミキサに振り分けられる。ミキサにはそれぞれ分光計等のバックエンドが接続される。638GHz帯、763GHz帯、2THz帯に輝線をもつ主な分子等に、それぞれ、オゾン、水蒸気、酸素原子があり、さらにその他にも20種類程度の分子等の輝線がある。風、温度はいずれの分子等の観測からも導出できるが、成層圏から下部熱圏の間のどの高度でも精度良く測ることができるように対象の分子とその輝線を選んだ結果、これら3つの周波数帯が選択された。SMILES-2衛星の外観は図3のようなものを想定している。衛星の総重量は約520Kg、高さ約3.2mである。この重量、大きさは、JAXAの強化型イプシロンロケットで550km、傾斜角66度の軌道へ打ち上げが可能な範囲に入っている。衛星は図の衛星進行方向(2方向)のどちらかに進み、アンテナのビームは、斜め前と斜め後ろの2方向に向けられる。SMILES-2が取る軌道では、軌道面に対する太陽の高度(β角)は、-90度から+90度の全ての範囲を取り得るので、+Y面に太陽光が当たらないように、軌道面に対する太陽の方向によって、+Xまたは-Xのどちらかを衛星進行方向にするか選択し姿勢を決定する運用を行う。大気リムの高度スキャンは0~200kmの範囲を、衛星の姿勢をX軸の周りに約7度の幅で回転することにより行う。下から上へのスキャン時に斜め前方向を観測し、上から下へのスキャン時に斜め後ろ方向を観測することを約2分弱の周期で繰り返すことで、図4のように同じ大気を数分おいて観測し、水平風のベクトル成分を得られるようにする。SMILES-2衛星の技術的課題超伝導受信機はSMILESにより宇宙実証されてきた技術だが、より良い観測を実現するために低雑音化や周波数特性の改善などの開発が必要である。特に2THzのHEB受信機は世界的にも使用されている例5図2SMILES-2 のブロック図。4 K に冷却するステージの上に 638 GHz 帯、763 GHz 帯のSIS ミキサと、2 THz 帯の HEB ミキサを搭載する。図3 SMILES-2 衛星の外観。2 つの 75 cm 開口径のアンテナを持つ。リム観測方向の面には大型の放熱板を設け、この面には太陽光を当てない姿勢を取るように運用する。図4 SMILES-2 の軌道とリムを観測する大気の水平位置の関係の概念図。894-3 全大気圏衛星観測(SMILES-2)計画の目標と課題
元のページ ../index.html#93