HTML5 Webook
115/258

図13に示すように、この結果は先行結果と整合性が取れていた。本研究では、衛星周波数リンクでありながらわずか12時間の測定で16桁半ばの周波数比較を実現した。NICTの人工衛星を介した直接周波数比較の活動としては、2006年に衛星双方向時刻周波数比較によりアジア―ヨーロッパ間では初めてのNICTとPTBの一次周波数標準(NICT-CsF1とPTB-CSF1)の直接周波数比較があった[44]。そして、2013年には本稿で紹介したNICT—PTB間のTWCPリンクで、光周波数標準の国際直接周波数比較、とりわけ大陸間直接周波数比較を世界に先駆けて実施している。2016年には、英国NPLとPTBの間でGPSを用いた171Yb+光時計の直接周波数比較[45]が報告されているが、NICT以外でTWCPを用いた光周波数標準の比較はこれまでにない。そこで、より多くの研究機関がこの方法を導入できることを期待し、TWCP用のモデムを製品化した。今後、多くの機関がTWCPを導入し、より高精度な衛星周波数リンク網が実現し、多くの機関と高精度に光標準周波数を比較できるようになることを望んでいる。我々は、これと併せてBIPMのPetit博士らが進めているIPPPを利用した周波数比較にも積極的に取り組んでいる。Sr光格子時計を用いた時系実信号生成UTCには実信号が無いため、各機関では独自の方法で時系実信号を生成している。NICTでは18台の商用セシウム原子時計から成る平均原子時を参照して、標準時系の局部発振器(原振)に採用した水素メーザーの周波数を調整して実信号の標準時系UTC(NICT)を生成している。これを9時間進めることで日本標準時を生成し、国内に供している[46]。我々は日本標準時の高精度化を狙い、高精度な光周波数標準であるNICT-Sr1を用いた時系実信号を生成した[39][47]。この実信号生成実験までに、NICTとPTBではマイクロ波原子時計の周波数を光格子時計で事後校正することで、光格子時計に基づく時刻指標の作成を試みていた[47][48]。特に我々は、連続運用に適したマイクロ波原子時計を高精度な光周波数標準で間欠的に評価することで双方の特性を生かした「光マイクロ波ハ5-200-100010020011.522.533.5Yb/SrDaily meanFrequency difference (10-15)Day in 2017/22017年2/22/3(Yb−Sr)×10−15-200-10020010002/1Yb−Sr平均(a)1E-161E-151E-141E-131E+01E+11E+21E+31E+41E+5Yb/SrFitting curve: 9.4*10-13*t-0.72HM(NICT)/UTC(KRIS): TWCP for Feb.1 ~ 3Allan deviationAveraging time [s]アラン標準偏差10−1610−1510−1310−14平均化時間(s)1001011021031041059.4×10−13t −0.72(b)TWCP (2017/2/1 −2017/2/3)図12 (a)3日間の周波数差 の測定結果(a)赤点と青点はそれぞれ30s平均と各測定日の平均値。(b)赤線と緑線はそれぞれ全測定データを用いた と仲介周波数標準の周波数差 のアラン標準偏差。青線は赤線のフィッティング。 が の安定度よりも劣化しているのは、このときのHM(NICT)の実験室間の伝送系が原因であった。323436384042RIKEN2016KRISS/NICTNMIJ2018INRIM/PTBRIKEN2015NMIJ2014(R−1.207507039343300)×10-15図13 本研究結果 とこれまでに報告されていた171Ybと87Srの周波数比(NMIJ2014 [41], RIKEN2015 [42], RIKEN2016 [21], INRIM/PTB [28], NMIJ2018 [43])。NMIJとRIKENの結果をそれぞれ赤四角と緑丸、INRIMとPTBの結果をピンク三角、本研究結果を青三角で示している。1094-5 ストロンチウム光格子時計の周波数比較及び時系生成への応用

元のページ  ../index.html#115

このブックを見る