測される周波数はAOM2の影響を受けるがAOM1の影響は受けないような構造にした。本研究で開発した時計レーザーは、線幅を1 Hz程度に抑えることができた。またULE共振器の経年ドリフトは0.05Hz/s以下であり、これを、AOM2を利用し打ち消すように周波数を動かすことで極めて安定なレーザーとなった。TAで増幅されたレーザー光は、イオントラップチャンバーと同一の光学定盤内に置かれた波長変換システムに送られる。この波長変換システム内にあるPeriodically Poled KTP(PPKTP)結晶共振器に200 mW入射し、最大で95 mWの波長473 nm光を得ている。これに続きBBO結晶共振器に入射させることで最大18 mWの出力を得た。得られたビームはλ/2波長板や偏光ビームスプリッター(PBS)で強度を調整し、最終的に2µW程度をイオンに照射する。検出光についても同様にULE共振器に対して安定化している。しかし、この検出に用いる遷移は線幅が360kHzと比較的大きく、時計遷移ほどの精密な周波数制御は必要とされないうえに、周波数を原子蛍光から確認することができるので光周波数コムでの確認も必要ないため、図3のような簡潔な構成となっている。波長922 nmの基本波からの波長変換は、時計遷移光と同様の構成となっているが、初段の第二次高調波発生には導波路型Periodically Poled Lithium Niobate(PPLN)結晶を利用した。波長230nmのビームは最大で5mWほど得られているが、蛍光強度の飽和には100µW程度の入射で十分である。それ以上の入射は電極等からの散乱を増やすことになり、量子状態検出における背景信号となる。2.3時計遷移観測システム実験装置を図4に示す。イオントラップ電極は10-8Paの超高真空槽に設置されており、Ca+とIn+はその中で捕捉する。それぞれロード時に必要となるイオン化レーザーはフリップミラーで照射のon/offをコントロールし、各々のロードの時のみ照射する。Ca+は波長397 nmと866 nmの半導体レーザー光でレーザー冷却され、これが冷媒イオンとなってIn+を共同冷却する。レーザー冷却されたCa+は波長397nmの共鳴蛍光光子を放ちこれを800 mm離れた場所に設置したイメージインテンシファイアCCDカメラ(ICCD)で結像しその様子を観測する。In+の時計遷移観測には前節で述べた波長230nmの検出光と波長237 nmの時計遷移光が必要になる。この2つのビームはPBSで直交した偏光にて重ね合わせ、イオンに照射する。直交した2つのビームはチャンバー照射直前に置いたλ/4波長板で円偏光に変換する。本実験装置では2通りの偏光の組合せを用いる。1つは、リニアトラップの軸方向(図の上下方向)を量子化軸として取ったときの、σ+偏光230nmビームとσ-偏光237 nmビームで、ここでは偏光Set+と呼ぶこととする。また逆にσ-偏光230nmビームと図3 時計遷移光(波長237 nm)と検出光(波長230 nm)の発生システム図4 時計遷移観測システムの光学系概略図PMTは光電子増倍管、ICCDはイメージインテンシファイアCCDカメラ、PDはフォトダイオード、PBSは偏光ビームスプリッターを表している。ECDLTAAOM1AOM2ULEin-cavityPPKTPopticalcombin-cavityBBOECDLTAAOMULEwaveguidePPLNin-cavityBBO237 nm (clock, 1S0-3P0)230 nm (detection, 1S0-3P1)95 mW@473 nm95 mW@461 nmmax 18 mW@237 nmmax 5 mW@230 nmSolar-blindPMTICCD CameraCa+In+Ca+ fluorescence(397 nm)In+ fluorescence(230 nm)800 mmPBSPDvacuumchamber230nmbeam237nmbeam397nm beam(Ca+ cooling)flip mirrorCa+ ionizationlasersdichroic mirrordichroic mirrordichroic mirror866nm beam(Ca+ repumping)PMTfor 397nmλ/4 plateIn+ ionizationlasersvertical direction1214-6 インジウムイオン光周波数標準
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