σ+偏光237nmビームの組合せを偏光Set–とする。偏光Set+では230nm光の照射により光ポンピングの効果によりmF=+9/2に初期化した後、σ-偏光の波長237nmのレーザーにより図5に示したCL+遷移が励起される。また偏光Set–によりCL-遷移が励起される。次節で記述するとおり、本計測ではこの2つの遷移を利用し周波数計測を行う。これらの偏光の組合せは、λ/4波長板をマウントした自動回転ステージの制御で簡単に切り替えることができる。In+の共鳴蛍光光子はICCDの量子効率の違い及び焦点距離の違いからCa+共鳴蛍光光子を撮影するICCDの像上では検出されず、In+は光らないスポットとして認識される。そのため、その量子状態は230nmの蛍光光子を用いて別に設置した深紫外領域のみに感度を持つ光電子増倍管(PMT)で測定する。時計遷移周波数の計測3.1副準位縮退状態でのスペクトル計測磁気量子数量子化軸射影成分mFがゼロとなるゼーマン副準位を持つ原子種では、mF=0の下準位からmF’=0の上準位への1つの遷移から時計遷移周波数が得られる。In+はmF=0の副準位を持たないので、どの準位も僅かな磁場で周波数シフトを起こしてしまう。そこで仮想的に定義される時計遷移周波数を中心に対称に配置する2つの遷移の平均として時計遷移周波数を得ることができる。2017年に行ったNICTにおける最初のIn+光時計遷移周波数計測として、前述のSet+とSet–で得られたスペクトルの中心値を平均することでその中心値の決定を行った。この時の計測では3日間で合計36セットのスペクトルを計測し、図6に示すデータを得た。図7に過去に報告された115In+光時計遷移周波数と図6のデータを平均して得られた値の比較を示す。本計測で得られた周波数は1 267 402 452 901 049.9(6.9)Hzで2007年に参考文献[11]で報告された値と不確かさの範囲で一致した。また、この計測値をもって2017年にCIPMの推奨値の更新に貢献した。3図5 検出遷移光・時計遷移光照射時に誘起される遷移(a)偏光Set±の時optical pumpingの効果でイオンはmF=±9/2状態に遷移する。(b)pumping後に引き続き時計遷移光を照射することで、それぞれ図中のCL±遷移を誘起する。図6 スペクトル計測による絶対周波数の測定Set+とSet-の偏光で得られたスペクトルの中心値を平均し、それを36セット分積算した。Session A,B,Cはそれぞれ3日間の計測日に対応する。EX-EX+CL-CL+-40-20 0 20 40 60 80 100 120 140session Asession Bsession Cabsolute frequency / Hz -1 267 402 453 901 000Set+frequency / Hz -1 267 402 453 901 000Excitation rateSet-frequency / Hz -1 267 402 453 901 000Excitation rate3日間(36セット)のデータを積算Set±の中央値を平均122 情報通信研究機構研究報告 Vol. 65 No. 2 (2019)4 原⼦周波数標準
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