は一致しない。そのためできるだけ多数の原子時計の加重平均をとることで、より安定で正確な標準時系を実現している。地球の自転周期と帳尻の合った時刻の方が天体観測による航海等において歴史的に便利であったため、現在においても世界時UT1*4とのずれが±0.9秒以内を保つよう、1秒ステップで調整して、UTCを生成している。TAIあるいはUTCは、BIPMが算出するバーチャルな時系であり実信号は存在しないため、そのまま実生活で利用するのは不便である。そこで、各機関は自局の原子時計を利用するなどして、UTCを実信号としてローカルに現示した標準時UTC(k)(“k”は機関名の略称)を生成している。生成方法に国際的な決まりはないが、秒の定義諮問委員会CCDS(Comité Consultatif pour la Définition de la Seconde)勧告(CCDS1993)によれば、UTCと100ns以内で同期することが望ましいとされている[6]。UTC(NICT)に基づくJSTについては本特集[8]を参照いただきたい。各機関はUTC(k)と自局の各原子時計の5日ごとの時刻差データ及びGPS timeと各UTC(k)の時刻差データ等の時刻・周波数リンクの情報をBIPMに提供している。これらのデータにより、GPSなどを経由して各UTC(k)間の時刻比較が可能になり、さらに各UTC(k)間の時刻比較を経由して世界中の全ての原子時計間の時刻比較も可能となる。BIPMはこの原子時計の比較データを基にEAL及びUTCを計算し、月報Circular T内で前月の5日おきのUTC−UTC(k)をまとめて報告する(Circular Tからの抜粋例[9]を図3に示す)。UTCは非常に安定である[10]ため、最近では一次及び二次周波数標準を基にしたTAI秒(TAIの歩度)の調整は頻繁に行われていない。2012年の9月以前はほぼ毎月の調整があったが、それ以降は2016年11月から2017年4月の半年間を除き調整は無かった。た図2 標準時系の生成方法機関k国際度量衡局BIPM協定世界時UTC国際原子時TAI閏秒世界時UTUTC(k)調整自由原子時EAL>400 clocksNICT調整日本標準時(JST)調整水素メーザーSI秒を現示UTC(NICT)一次(or 二次)周波数標準Cs合成原子時18台図3 BIPMの2019年1月の月報Circular T 372からの抜粋[9]2019年11月末から12月末までの30日間のUTCとUTC(k)の時刻差(単位はns)が報告されている。ここでは割愛しているが、Circular Tには、一次及び二次周波数標準による評価に基づいたこの30日間のTAI秒の校正値も報告される。…72 現示精度に基づいた標準時系の階層
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