HTML5 Webook
143/258

ルにカップルされ、そのファイバーの反対から誘導ブリルアン散乱を引き起こす2本の励起レーザーを入射させる。今回は励起レーザーとして、単一モードファイバーレーザーと波長可変範囲の広い外部共振器型半導体レーザーを用いた。光サーキュレーターを介してスプールファイバーにカップルされた光強度は共に10 mW程度である。2本の励起レーザーは、取り出したい光コムの発振モードの周波数より約11GHz高い周波数にチューニングし、励起レーザーにより引き起こされる誘導ブリルアン散乱の周波数が選択したいモードの周波数から外れないよう、励起レーザーにはそれぞれ独立に周波数安定化を施している。このようにして光コムから選択的に増幅された2つの発振モードは、光混合を引き起こす単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD: Uni-Traveling Carrier Photodiode)にカップルされ、その周波数差に相当するテラヘルツ連続波を発生させる。UTC-PDにカップルされる2本の光のパワーは合計約10 mWである。UTC-PDは、光入力により発生したキャリアのうち電子の応答だけがその素子の応答速度を決定するような構造に設計された非線形素子であり、高速性と高出力特性を同時に実現している[52]。その周波数応答帯域は数THzまで広がっているが、その出力強度は出力周波数の3~4乗で反比例しており、実際の出力パワーは、100GHzで数十mW、1 THzで約1µW、3THzで数十nW程度であると見積もられている。3.2.2発生させたテラヘルツ連続波の性能評価光コムを基準にしてUTC-PDを介して発生させたテラヘルツ連続波の精度を、周波数可変性、周波数安定度、位相雑音、の点から評価した。誘導ブリルアン散乱を引き起こす励起レーザーの発振波長を変えることで、光コムから取り出す2本のモードの周波数間隔を変え、100 GHz付近と700 GHz付近のテラヘルツ連続波を発生させた。発生させた100 GHz波と700GHz波は、それぞれの周波数に対応したハーモニックミキサーを用いて評価した。図12から分かるように周波数分解能100 Hzで60 dB以上の非常に高いCN比のスペクトルを実現している。また、図13に示すように、取り出す光コムのモードを選択することで、テラヘルツ連続波の周波数も光コムのモード間隔(今回は100 MHz)おきに変化させることができている。周波数安定度と位相雑音は図14で表され、発生させた100 GHz波と700 GHz波の精度は、光コムのモード間隔を制御している信号発生器の精度と同じであることが分かった。次に、3 THz波を発生させ、その性能を評価した。UTC-PDから発生する3 THz波の出力パワーは数十nWと非常に小さいためハーモニックミキサー単体では精度良く評価できない。そこで、ホットエレクトロンボロメーターミキサー(Hot Electron 図11 光コムをベースにしたテラヘルツ連続波発生システム光コムの任意の2つのモードを誘導ブリルアン散乱により取り出し、UTC-PDに入射することでテラヘルツ連続波を発生させている。図12 光差周波発生による100 GHz連続波のスペクトルハーモニックミキサーで測定されたRFビートスペクトルを周波数校正。100GHz99.998100.000100.002RBW:100Hz10dB / divGHz1374-7 テラヘルツ周波数標準

元のページ  ../index.html#143

このブックを見る