HTML5 Webook
145/258

された3THz-QCLを用いた。THz-QCLの出力パワーは数mW以上であるため、超電導ストリップラインにホットエレクトロンを生成することは比較的容易であるが、THz-QCLの周波数特性が悪いと測定したい光コムをベースに発生させた3 THz連続波の性能を精度よく評価できない。そこで、THz-QCLの位相同期安定化を行った。3 THz-QCLの一部を超格子(SL)ハーモニックミキサー[44]に入射し、信号発振器の高調波とのビート信号を検出する。そのビート信号を使い、生成されたエラー信号を駆動電圧にフィードバックすることで、THz-QCLの発振周波数を、SLハーモニックミキサーを駆動する信号発生器のマイクロ波に位相同期安定化している。この位相同期安定化された3THz-QCLの出力光と光コムをベースに発生させた3THz連続波をHEBM上で重ね合わせ、得られたビート信号を使って3 THz連続波を評価した。100 GHz波、700 GHz波と同様に、光コムのモード間隔おきに周波数が可変であることが確認でき(図16)、周波数安定度及び位相雑音の結果(図17)から、発生させた3THz連続波も信号発生器のマイクロ波と同じ精度を有していることが分かった。光コムをベースにした高精度テラヘルツ連続波発生システムを構築し、100 GHz、700 GHz、3 THzにおいてテラヘルツ連続波を発生させ、その性能を評価した。その精度は参照信号として使用した信号発生器のマイクロ波のそれと同じであり、誘導ブリルアン散乱によるモード選択、UTC-PDによる光–THz変換、ハーモニックミキサーによる高調波発生、HEBMにおけるヘテロダイン検出、などにおいて余分な雑音を与えていないことが確認された。今回評価を行った3つの周波数帯域は、発生させたテラヘルツ連続波を評価できる帯域という点から選んでおり、今回開発したテラヘルツ連続波発生システムは、それ以外のTHz領域においても100 MHz間隔で非常に高精度なテラヘルツ基準信号を発生できると確信している。テラヘルツコムによる精密周波数計測とその技術応用周波数標準器の開発とその精密計測及び測定機器の開発は標準の精度向上における双対関係にある。本章では、THzコムを用いて開発されたTHz周波数カウンターの性能評価について説明する。また、THzコム技術を使ったTHz分周器についても紹介する。4.1テラヘルツ周波数カウンターの性能評価THzコム技術を用いた周波数カウンターに関しては、徳島大学の安井らによる先鞭的な研究があり、光伝導アンテナ(Photo-conductive antenna: PCA)内部に発生させた、光キャリアTHzコムを利用することで、サブTHz領域の計測において2.8×10–11の不確かさでの周波数決定に成功した[53]。世界的には、韓国標準科学研究院(KRISS)で周波数とパワーを同時計測可能なTHzスペクトラムアナライザーが開発さ4410-210-110010110210310-1510-1410-1310-1210-11 Allan DeviationAveraging Time (sec)Meas.BW : 50Hz OG THz wave vs Phase-locked QCL @3.1THz MW SG1 vs MW SG2 @13GHz10-1100101102103104105106-100-80-60-40-20020 Power Spectral Density (dBc/Hz)Fourier Frequency (Hz) PhaseNoise(OG-THz vs PhaseLocked-QCL)@3.1THz Converted from 13GHz to 3.1THz (+47.55dB) PhaseNoise(MW signal generator)@13GHz2.99983.00003.0002RBW: 300kHz10dB / divTHz3THz図16 光差周波3 THz連続波のスペクトル。光コムのモード間隔100 MHzに対応した、3 THz付近の信号を発生できることを確認。図17 光差周波3 THz連続波の周波数安定度(左)とSSB位相雑音スペクトル(右)1394-7 テラヘルツ周波数標準

元のページ  ../index.html#145

このブックを見る